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生きること・働くこと⑤ 仕事は “苦っ楽しい”?

 2018年7月19日

 
落語だって仕事となれば苦しいことも。でも楽しいから続けられる(写真は学生時代の筆者)。


落語家の桂歌丸さんが81歳で亡くなりました。「笑点」という人気テレビ番組で司会をやっていた人なので知っている人もいるでしょう。私は学生時代に落語研究会というサークルに入っていたので、親戚がいなくなったような寂しさを感じました。

歌丸さんは「私には落語しかない」と言っていました。高齢になってもテレビに出演し続け、寄席や全国の会場で本格的な古典落語を聴かせてくれました。何回か死にそうになるほどの病魔と闘い、まわりからは「もう苦労しないで楽したらどう」とも言われていたようです。「いつ楽するの?」という問いには「私が目を閉じたとき。それまではやり続ける」と答えたそうです。

さて、仕事とは苦しみながらやるものでしょうか。確かに歌丸さんは苦しみながらも仕事を続けてきましたが、それだけではなさそうです。いかにも生き生きと、私から見たら“楽しそうに”やっていたからです。

フランスの有名レストランに修行に行った料理長から聞いた話ですが、そのレストランの料理人たちは「朝から晩まで」働いているそうです。日本よりも労働時間が短く、たっぷりとバカンスも取る社会だと聞いているヨーロッパで、働きずくめの職場があるとは信じられなかったのですが、料理人たちは長時間働くことで早く仕事を覚え、一人前になりたい、そのためには時間を惜しんで仕事に没頭したいと考えているらしいのです。しかも、生き生きとかつ貪欲に仕事に打ち込んでいるとのことでした。将来は独立して有名な店を持ちたいとか三つ星シェフになりたいとか、はっきりした目標を持っているからこそできることなのでしょう。

苦しいけれどもがんばる、そして山を越えれば楽しくなる、という状況を“苦っ楽しい”と言うそうです。この言葉をロボットコンテストに挑戦する中学生が使っている、ということを聞いたのはずいぶん前のことです。まったくゼロの状態から、材料を集め、設計をし、試行錯誤の中で壁にぶつかってばかり、という苦しみの中で、ひとつずつ解決していく楽しみを感じる、ということを言っていますが、そういう経験は仕事にも通じると思います。

歌丸さんもフランスの料理人も“苦っ楽しい”人生と言えるのでしょう。誰かに強制されたのではなく、自分の意志で選んだ人生だから苦しくても楽しいのだと思います。

次回は、災害復興を支援する仕事について考えてみます。