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保健室のニーズ

年々、保健室に来室する子どもたちの訴えが多様化していると感じる。厳密に言うと、子どもを取り巻く背景の課題や問題が多様化しているのではないか。

表面的な子どもの訴えは、繰り返される体調不良や外科的な痛みが大多数である。しかし、生徒一人ひとりに寄り添いながら対応し、信頼関係が築けてくると、直面している現状を子どもたちが打ち明けてくれることがたまにある。例えば、「人間関係がうまくいかない」「死にたい気持ちになることがある」「親とケンカした」「家で暴力を受けた」「感情のコントロールがうまくいかない」etc…。また、言語化できない子どもたちは、行動化として「暴力をふるってしまう」「意識をなくしたように倒れてしまう」「学校に登校できなくなる」「選択制緘黙」「チック」など、SOSの表現方法が、集団適応において問題行動として捉えられてしまうことが多い。

これらの背景には、愛着障害、発達障害、家庭環境、虐待、性被害、親子関係など、こちらが予想もつかないような問題が隠れている場合があると、経験を積むごとに痛感するようになった。学校だけでは到底解決できない事案は、他機関の連携が必須になってくる。

和暦の平成が終わろうとしているが、時代的な変化も大きく、生活習慣や利便性からみると、子どもへの影響ばかりか、大人の生活スタイルも大きく変容している。こういった、時代の移り変わりによる大人の葛藤や不安は、子どもにも関係している気がする。もっと言うならば、社会的な不安が近年増加している。災害、Jアラート、少子高齢化、経済不安など、社会がせわしなく進んでいると、不安に駆られるのは、大人も子どもも同じであると考えられる。

また、いくつかの法律の改正に着目すると、子どもたちの現状に見合ったものへと変遷してきていると考える。 「学校保健安全法」は、平成20 年に改正された。当時、保健指導の範囲が保護者にも及ぶのかと驚愕したが、現在、養護教諭の保護者面談は日常的なものになっている。次に、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」は、合理的配慮を学校としてどう進めていくかは、現在でも課題の一つである。最後に、「教育機会確保法」については、今後もっと読み解いていく必要があり、教育現場での共通理解がまだ不足していると感じる。

このような時代の流れのなかで、保健室でできること=保健室のニーズを考えると、今まで通り、目の前にいる子ども・保護者へ「寄り添い、話を聴き、共感してやる気を出す言葉がけを丁寧に行う」ことである。子どもたちが、来室中に笑顔を見せてくれれば信頼関係の第一歩が拓ける。そして、根本的な問題解決にならなかったとしても、少しの間ホッとする時間を過ごし、安心・安全な場所を提供することでエネルギーの充電をしてくれればありがたい。

逆に、子どもから元気をもらったり、学ぶことも日々多い。「先生、癒しのテイクアウトお願いしま~す!」

発想豊かな中学生と共に歩んだ20年目。自分自身も更年期に負けずに専門性を高め、成長していきたい。


公立中学校養護教諭 ペンネーム 白衣の43歳 先生