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2025年07月10日

◇◇「就学支援金拡充! どうなる通信制高校の学費」(4回連載) 第2回 就学支援金拡充前の通信制学費の動き

第2回 就学支援金拡充前の通信制学費の動き

◎1単位12,000円が4割を占める

私立高校生等に支給されている高等学校等就学支援金(以下、就学支援金)は、現状では世帯年収約590万円で線引きされています。
通信制高校で言えば、世帯年収約590万円以上の家庭には「基準額」とされる1単位4,812円(定額制118,800円/年額)が支給され、約590万円未満の家庭には基準額に加算して在籍校の授業料を上限に1単位12,030円(同297,000円)まで支給され授業料が減額される仕組みになっています。
来年度からは、この約590万円の線引がなくなり一律で拡充される予定になっています。

単位料の授業料への就学支援金が少ないように感じますが、1年間30単位分、卒業までに74単位分支給されるため、定額制との差はほとんどありません。

就学支援金は、2020年度に拡充されました。その際にそれまで世帯年収約590万円未満を3区分して基準額の1.5倍、2倍、2.5倍と細分化していた支給額を2.5倍(1単位12,030円)に統一しました。
それによって、その後どうなったかというと授業料は値上がりしました。
就学支援金が拡充されたのだから授業料は安くなるのでは? とも思われがちですが事態は逆でした。
実情から言えば、就学支援金拡充と授業料値上げのバランスで家庭の支払金額は少なくなるという授業料ラインを各校が模索してきました。

次の表は1単位授業料の推移を学びリンクが調べてきたものです。20年度拡充の翌年にはまだ1単位5,000円以下という通信制高校もありました。5,000円というのは基準額4,812円だけで授業料無償になるというレベルです。

その後の推移では、1単位10,000円前後に集まる傾向が見られました。今年度はそれが12,000円に集まっています。1単位11,000円より高く12,000円以下の授業料は4割を占めています。
学費が値上げされたのかどうかは、保護者の皆さんはじめ学校関係者でもほとんどわからないのが実情です。今回は、授業料などの値上げ状況とその背景を説明します。




◎就学支援金拡充と学費のバランス


25年度も授業料値上げがありました。学びリンクの調べによると、1単位授業料を値上げした私立通信制高校は集計した前年度と比較できる154校中17校(11.0%)となっています。24年度は13校の値上げでしたから学校数ではそれを上回っています。

25年度に値上げした17校のうち10校は1単位12,000円へ値上げしました。このうち5校は10,000円から12,000円に20%値上げしています。
このほか定額制授業料値上げが5コース。授業料以外に入学金12コース、施設設備費11コース、教育充実費5コースなどの値上げがありました。

ちなみに通信制高校の学費値上げは、私立学校審議会による審議事項になっています。審議会での説明を果たして都道府県知事が認可するという経過をたどります。やみくもに値上げはできないことになっています。

また、就学支援金が拡充されてなぜ学費値上げに結びつくかは私立通信制高校の収支構造も背景にあります。
私立通信制高等学校協会(私通協)の調査によれば私立通信制高校の事業活動収入の大部分(約84%)は学生生徒等納付金が占めています。私立全日制高校の場合は、この比率が半分程度で約4割を自治体等からの補助金が占めています。経常費等補助金額は、生徒1人当たり換算で私立通信制高校24,900円、私立全日制高校で476,700円と約19倍の開きがあります。
通信制高校では、教育の質を向上させるには生徒からの学納金収入あってこその面があります。




今年度の授業料値上げの動きも就学支援金拡充を“先取り”する面も見られます。
就学支援金が拡充されるということは、保護者等の負担を大きくせずに学納金を増やせるチャンスとも言えます。
来年度からは私立高校生等向けの加算額の所得制限(世帯年収590万円未満)が撤廃され、すべての高校生が一律の就学支援金を受給できる予定です。私立全日制高校等の就学支援金は39万6,000円から最大45万7,000円に増額される見込みとなっています。

私立通信制高校生に対する支給額がいくらになるかは7月9日時点では明確にされていませんが、例えば現状の加算額である1単位12,030円に一律拡充されれば、授業料値上げした学校も来年度以降は保護者の負担を増やすことなく収入を拡大できることになります。
現状の通信制高校の授業料は、約95%が1単位6,000円以上12,000円以下となっています。来年度からは授業料無償化が一気に進む可能性があります。

私通協によれば24年度の就学支援金受給状況は、加算額受給(世帯年収約590万円未満)が50.3%、基準支額受給(同約590万円以上約910万円未満)24.8%、受給なし(同910万円以上)24.9%となっています。今年度からは、これまで約910万円未満とされていた所得制限の上限が撤廃され「受給なし」という層の方が就学支援金の対象となりました。

今回は、「就学支援金拡充前の通信制学費の動き」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は「2025年度最新通信制高校学費」についてご説明します。
次回もどうぞよろしくお願いします!