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ニュースの読み方・社会の見方①
「スポーツ指導に暴力(体罰)は許されるか」

 2018年10月26日

 
図示化するとニュースを理解しやすくなる。


ニュースと聞くと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。事件、事故、震災…。政治、選挙、国際情勢…。芸能、スポーツ、教育…。いろんなジャンルがありますが、どうやってニュースを見たり聞いたりしていますか。

世の中には情報があふれていますが、SNSやネットニュースで短い文章の情報にしか接しない人が増えているようです。少しでも社会の動きがどうなっているか、自分の生活とどう係わっているかについても関心を持ってもらいたいので、実際のニュースを材料にその読み方、受け取り方について一緒に考えてみましょう。

2020年に東京オリンピックが開催されるので、スポーツ界は明るい話題で盛り上がっていいはずですが、このところ不祥事に関するニュースが多いですね。今回は、ロスアンゼルスオリンピック代表だった体操の宮川紗江選手に関連した問題を取り上げてみます。

これは、宮川選手の元コーチが、指導する中で暴力を振るったとして日本体操協会から無期限登録抹消などの処分を受けたことに端を発する問題ですが、宮川選手は被害を訴えることはせず、逆に日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長らが元コーチの暴力を理由に宮川選手を引き抜く目的で宮原選手にパワハラを加えたと主張して、複雑になってしまいました。

私がまず言いたいことは、同じ映像が何度も流されるテレビやネットの映像が頭にインプットされて、自分の判断ができなくなることは避けたいということです。内容はともかくとして、未成年の宮川選手が文書を淡々と読み上げ、そつのない表現で切々と訴える映像と社会的地位のある塚原光男・日本体操協会副会長がテレビ局の追っかけ取材に「宮川選手の言っていることは全部ウソ」と答える映像では、どうしても宮川選手に同情してしまいます。ニュースの本質を考えるときには、感情に流されず、冷静に情報を分析する必要があります。

では、この問題の本質は何でしょうか。大きく二つに分けて考える必要があります。一つは、スポーツの指導をする際に暴力を振るったという問題。もう一つは、パワハラ(パワーハラスメント)の問題です。

暴力問題については、宮川選手も元コーチも認めており、よくなかったと反省をしていますので、処分の重さが妥当かどうかという問題になっています。しかし、スポーツ指導と暴力の問題についてはもっと議論すべきことではないでしょうか。なぜならスポーツ界には「強くするためには体罰(暴力)も必要」という考えが残っているからです。しかし、戦前ならまだしも戦後は完全に禁止されています。「以前なら体罰は許された」という人がいますが、それはウソで、見過ごしていただけなのです。今回の宮川選手の暴力問題は、被害者が許しても暴力そのものがいけないので、完全にアウトなのです。

フランス遠征から帰った日本の学生が「フランスでは子どもから大人まで、男も女も楽しく柔道をやっているのにびっくりした」と言うのを聞いたことがあります。今回のニュースが、学校の部活も含めてスポーツ指導のあり方を考えるいい機会になればいいな、と思います。

次回は、二つ目のパワハラ問題について考えます。