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生きること・働くこと⑦ “マニュアル人間”でいいんです

 2018年8月21日

 
東京湾岸の工場地帯に居並ぶ“キリン”の群れ。こういう現場ではマニュアル通りやらないと大事故になる。


あるファミリーレストランに入ったときのことです。「○○(店名)にようこそ」という元気な声をかけられました。すると、近くにいた店員も即座に「○○にようこそ」、その横にいた店員、さらに奥にいた店員も次々と同じ言葉を発し、輪唱のように響き渡りました。私は何事が起きたかと立ちすくんでしまいました。

同じ頃、炉端焼き店に入って料理を注文したら、目の前の店員が「喜んで!」と大きな声を出すと,店員の間に「喜んで!」という声が続きました。焼いたばかりの魚を長いへらで客に出そうとしている店員まで顔だけちらっと向けて「喜んで!」と叫ぶので「嘘言え!」「ほんとは喜んでないだろ!」と突っ込みたくなったのを覚えています。

いずれもだいぶ前の話ですが、それからそういう型どおりの「おもてなし」が行き過ぎだと批判されるようになり、状況に関係なく言われたとおりにしかやらない人を“マニュアル人間”と呼ぶようになりました。

マニュアル通りにやるのは悪いことなのでしょうか。マニュアルとは、初心者向けの手引書のことです。何をしていいかわからない人に「とりあえず最低限こうして」ということが指示されているのです。ただ、それだけでいいというわけではありません。マニュアルには「心を込めてお客様に接しましょう」とも書かれています。「ようこそ」と言えるようになったら、“お客さま”の様子や状況に合わせて「いらっしゃいませ」とか「こんにちは」、さらには「今日は暑いですね」「お疲れではないですか」など、相手に合わせて自分なりに工夫した「おもてなし」を増やしていくことが期待されているのです。初心者から経験豊かな人まで同じ言葉を合唱するのは「心がこもっていない」と思われるので、マニュアルの目的に反しているということになります。

レストランの接客マニュアルに「お食事のお客様にワインを勧める」「ワイン注文のお客様に高いワインを勧める」などと書かれてあることがあります。お店の売り上げを上げるためですが、客が「勧められてよかった」と満足するか「無理にお金を出させようとしている」と不快に思うかは、やり方次第です。状況をしっかりと把握し、心を込めて臨機応変に対応するという、“応用力”を早く身につけること、それこそマニュアルが求めていることなのです。

最初は素直に指示に従うことは正解ですが、いつまでも同じことをやっていると“指示待ち人間”と言われてしまいます。

次回は、就職活動について考えてみます。