通信制高校と「その後」#03(前編)
「少人数の環境やソーシャルスキルを通して『自分らしさ』を発見」Yさん親子
2025年9月4日
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Yさん(18歳・男性)/お母さま
18歳で通信制高校を卒業し、現在は介護のお仕事に従事されているYさん。中学時代に療育手帳を取得し、進路に悩みながらもご自身に合った環境を見つけ、着実に成長を遂げてこられました。今回はYさんご本人とお母さま、そして当時お世話になった通信制高校の先生にお話を伺いながら、その歩みを振り返っていただきました。
18歳で通信制高校を卒業し、現在は介護のお仕事に従事されているYさん。中学時代に療育手帳を取得し、進路に悩みながらもご自身に合った環境を見つけ、着実に成長を遂げてこられました。今回はYさんご本人とお母さま、そして当時お世話になった通信制高校の先生にお話を伺いながら、その歩みを振り返っていただきました。
聞き手:畠中直美(チャレンジドLIFE)
3児の母。長男が自閉スペクトラム症。長男の幼少期、進路選択や就労の情報がなかなか得られないことに不安を覚えたことをきっかけに、発達障害児の親として知りたいことを学び、発信する「チャレンジドLIFE」を立ち上げた。
3児の母。長男が自閉スペクトラム症。長男の幼少期、進路選択や就労の情報がなかなか得られないことに不安を覚えたことをきっかけに、発達障害児の親として知りたいことを学び、発信する「チャレンジドLIFE」を立ち上げた。
[進路選択のきっかけ]
周囲と関わることがしんどかった
畠中:初めに、通信制高校を選ばれた背景について教えていただけますか?
Yさん:中学生の頃、自分の発達特性の影響もあって、「誰かに見られているのでは」「何か言われているのでは」といった被害的な思い込みが強く、学校に通うことをとてもつらく感じるようになりました。人と関わることに抵抗があり、登校時間をずらしたり早退したりすることも増えていきました。支援学級に通っていましたが、通常学級にはなかなか上がれず…。それもあって、高校はできるだけ少人数で、自分のペースで過ごせる環境がいいと思うようになりました。
畠中:お母さまは、進路についてどのようにお考えでしたか?
お母さま:はい。当時は支援学校、私立の全日制高校、通信制高校の3つを候補に挙げて検討しました。支援学校は自宅から遠かったため候補から外しました。全日制高校では介護コースにも関心があり、実際にオープンキャンパスに足を運んだのですが、大人数の環境が息子には合わないのでは? と不安が残りました。
通信制高校については、以前私が支援員養成講座でその学校の校長先生の研修を受けたことがあり、そのときの温かい印象が心に残っていました。さらに、体験学習の際に先生がとても優しく接してくださり、息子も楽しんでいる様子が見られたのが大きな決め手になりました。そのときちょうど、息子のゲームへの課金のことで悩んでいたのですが、その相談にも親身に乗っていただけて、安心感がありました。
[学校生活の第一印象]
通信制って暗いイメージだったけど…
畠中:初めて通信制高校に行かれたときの印象はいかがでしたか?
Yさん:思っていたよりも明るくて、驚きました。通信制高校というと、「パソコンだけで淡々と学ぶ場所」や「あまり人と関わらない学校」というイメージがあったのですが、実際は全然違いました。授業にテーブルゲームが取り入れられていたりして、楽しみながら学ぶことができそうだなと感じました。最初は少し緊張しましたが、不安を感じるようなことはありませんでした。
畠中:自宅からの通学について、不安はありませんでしたか?
お母さま:最初は「一人で電車に乗れるかな…」と息子自身も不安そうでした。そこで、最初は私と一緒に電車通学の練習を行い、2回目は私が少し離れて後ろから見守りながら行いました。
Yさん:一人で電車通学をするようになった後も、電車遅延など最初は戸惑うこともありましたが、そのたびに母とLINEで連絡を取りながら、少しずつ慣れていきました。
[通信制高校での成長]
人と話すのが怖くなくなった
畠中:通信制高校での生活はいかがでしたか? 良かったと感じていることがあれば教えてください。
Yさん:無事に卒業できたことが何より嬉しかったです。少人数で通いやすく、自分に少しずつ自信が持てるようになりました。クラスには11人在籍(本年度は14名)していて、入学や卒業のタイミングでメンバーが入れ替わります。最初は緊張しましたが、徐々に話しやすくなっていきました。休憩時間も長く、自然と仲良くなるきっかけがたくさんありました。
また、ソーシャルスキルの授業が充実していたのも印象的でした。みんなで協力して映画を撮影したり、ボランティア活動に参加したりと、みんなで一緒に何かをする時間が本当に楽しかったです。
畠中:学校生活を通して身についたと感じる力はありますか?
Yさん:一人で電車に乗れるようになったことは、大きな成長だと思います。また、コミュニケーション力も少しずつついてきました。以前は買い物で店員さんと話すことだけでも苦手だったのですが、先生との会話を重ねながら、人と会話をすることに徐々に慣れていきました。自分と同じコミュニケーションの悩みを抱える友人に不安な気持ちを伝えることや、周りの人から「どうしたら話しやすくなるか」のコツを聞くことで、相手の気持ちに寄り添うことの大切さも学びました。