「気になりますね!通信制高校」
定通振興法大幅改正でどうなる通信制②
「定通振興法」大幅改正 振興策はどうなる
2026年9月25日
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◇◇「定通振興法大幅改正でどうなる通信制」(3回連載)
第2回 「定通振興法」大幅改正 振興策はどうなる
◎“想定以上の膨張”に歯止め!?「定通振興法」(高等学校の定時制教育及び通信教育の振興等に関する法律)が2026年7月に改正された大きな背景は何かと言えば、通信制高校の “想定以上の膨張”でしょう。
生徒数はこの10年間で1.7倍(16年度 180,431人→26年度 311,782人)、学校数は1.5倍(同244校→同358校)となりました。しかも教育内容もそれまで想定していなかったものも加わり人気を得ています。e-スポーツコース、アスリートコースなどはその代表例です。
全日制高校の一部には通信制高校実施校とサポート校との関係を揶揄して“教育の丸投げ”との批判が以前からありました。ところが最近の通信制新設を見ると全日制高校が新たに通信制課程を開設するパターンが多くのエリアで見られるようになりました。学びリンクの調べでは、過去5年間に新設された私立92校のうち約7割にあたる63校が全日制高校による通信制課程新設です。直接の批判もちょっと言い出しにくくなっている面があるかもしれません。
通信制高校の人気はいずれ収まるだろうと見ていたフシもありました。この点はコロナ禍の影響もあります。この渦中に「コロナ回避の長期欠席者」が約6万人(2021年度)となったり、「自宅におけるICT等を活用した学習活動を出席扱いとした小・中学生」の人数がそれまでの数百人から1万人以上(2021年度から24年度)となったり、学校に行かない状態の背景も新たなものが加わってきました。
実は今回の法改正では、法律の名称も変わりました。
旧名称:高等学校の定時制教育及び通信教育振興法
新名称:高等学校の定時制教育及び通信制教育の振興等に関する法律
新名称:高等学校の定時制教育及び通信制教育の振興等に関する法律
並べると新名称のほうが長くなったのはわかりますが、一見するとどこが変わったの? と、ならないでしょうか。
変更のポイントは新名称に「等」が加わったところです。この1字が加わったことにより、「振興(教育の充実)」だけでなく、通信制高校の“想定外の膨張”に対して「適正な実施・運営の確保(教育の質の担保)」までを国や学校の責任として対応させる狙いがあります。
今回の改正による支援策としては、「社会的自立に向けた資質などが身につけられるカリキュラム開発」や「卒業後の進路を見据えた支援」などを行う調査研究予算として27年度に約1億1,700万円が要求される予定です。この予算が多いか、少ないかは判断が分かれるかもしれませんが、この予算で想定されているのは7校程度の学校への支援です。“膨張”している他の学校はどうなるのだろうと思いました。
このほか、広域通信制高校への指導監督を行う所轄庁(都道府県の私学振興課など)を支援するために約6,100万円(対象:2か所)、通信制高校への進学を検討する生徒・保護者、中学教員への情報発信(ホームページなど)に約800万円が予算要求される予定です。
一方、1953年にこの定通振興法が制定されたのを契機とした定時制・通信制高校生と教員への振興策は次のようなものでした。ちなみに53年時点はまだ通信教育だけでは高卒資格を得られませんでしたが、この法律を契機に高校卒業資格が認められます。当時の生徒にどれだけ大きな希望を与えたかはかり知れません。
《1953年定通振興法を契機とした振興策》
①教科書代の半額補助
②NHKラジオ「通信高校講座」の本格化
③法制定2年後の1955年に通信教育のみで高校卒業が認められる(文部事務次官通達)
④定時制・通信制教員に「定時制通信教育手当」が国庫補助を背景に支給される
①教科書代の半額補助
②NHKラジオ「通信高校講座」の本格化
③法制定2年後の1955年に通信教育のみで高校卒業が認められる(文部事務次官通達)
④定時制・通信制教員に「定時制通信教育手当」が国庫補助を背景に支給される
◎法改正反対の理由から考える
定通振興法改正は、7月15日の参議院本会議で賛成多数で可決成立しました。翌日の新聞各紙には全国紙、ブロック紙をはじめ地方紙にもそれぞれ小さな扱いですが関連記事が掲載されました。
記事のトーンとしては「多様な生徒の受け皿として学校数が急増する中、一部の通信制高校では出席を確認せず単位認定するなど、不適切な運営が問題となっていた」(共同通信)などと振興より是正を指摘する記述が目立ちました。
定通振興法改正を踏まえてこの8月末には「通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議」の初会合が開かれています。
ここでも全ての通信制高校への書面調査の実施をはじめ法令違反があった学校には私学助成を減額・停止するようにというコワモテの論調がみられます。
定通振興法改正は賛成多数で成立しましたと前述しました。議員立法として衆議院文部科学委員会委員長提出として衆議院で可決され、衆議院は反対会派なしで参議院へ送られました。
参議院では、れいわ新選組(現・いのちの党)が反対しました。その反対理由から今回の法改正を考えてみました。
れいわ新選組がこの法改正に反対したのは、次の5点の理由だといいます。
《定通振興法改正への反対理由(れいわ新選組)》
①財政・人的措置や交通制度上の権利が担保されていない
②「多様な生徒」の学ぶ場確保を掲げながら、夜間定時制の統廃合が進行
③通信制で学ぶ当事者の視点からの支援が弱い
④私立広域通信制高校の急増に対して、所轄する自治体の体制が十分とは言えない一方、それに対する自治体への支援はない
⑤通信制の適正化を定める基本方針が、通信制の生徒を追い詰め、また通信制の柔軟・自由な学習運営に対する管理強化にならないかという懸念
①財政・人的措置や交通制度上の権利が担保されていない
②「多様な生徒」の学ぶ場確保を掲げながら、夜間定時制の統廃合が進行
③通信制で学ぶ当事者の視点からの支援が弱い
④私立広域通信制高校の急増に対して、所轄する自治体の体制が十分とは言えない一方、それに対する自治体への支援はない
⑤通信制の適正化を定める基本方針が、通信制の生徒を追い詰め、また通信制の柔軟・自由な学習運営に対する管理強化にならないかという懸念
改正に反対した同党も「時代の変化に合わせて定時制・通信制の役割を位置付け直し、規制緩和によって野放図に急増した私立広域通信制について、教育の質の保証のため規制を強化。このこと自体は適正な運営のために一定必要と考える」と通信制高校について厳しい見方をしています。
同党が反対のポイントにしているのが④の所轄庁の体制についてです。私立通信制高校の急増は政府の規制緩和によるものであるのに、自治体の知事部局で通信制高校の管理に当たっているのは1人か2人で、しかも教職・教育行政経験者を配置しているのはその半分以下に過ぎないと指摘しています。
通信制高校、とりわけ広域通信制高校への懸念は法改正賛成・反対どちら側にも色濃くありました。
しかし、“想定外に膨張”してきた通信制高校は法律に支援されたからでも、規制されたからでもなく自然に増えて来た結果ではないでしょうか。自分のペースで学校生活を組み立てられる通信制高校は一定数の人には学ぶ環境として居心地が良かったからだと思います。
上記の反対理由で言えば、⑤のような“角を矯めて牛を殺す”ことにならないようにこれからは生徒・保護者が法律による動きをチェックしていく必要がありそうです。
今回は、『「定通振興法」大幅改正 振興策はどうなる』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回は『「定通振興法」大幅改正 関係者はどう見ているか』についてご説明します。
次回もよろしくお願いします。

