「気になりますね!通信制高校」
定通振興法大幅改正でどうなる通信制①
「定通振興法」大幅改正 法律の目的が変わった
2026年8月25日
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◇◇「定通振興法大幅改正でどうなる通信制」(3回連載)
第1回 「定通振興法」大幅改正 法律の目的が変わった
◎多様な生徒の特性に配慮へ2026年7月に通信制高校を規定する理念法「定通振興法」(高等学校の定時制教育及び通信教育の振興等に関する法律)が改正されました。1953年の施行以来73年にして初めての大幅改正でした。
現在の通信制高校とこの法律が施行された時代を比較すると、施行当時はほとんど想定されていないようなこともありそれが法律改正の立法事実にもなっています。また“今昔物語”の感もあります。
今回の改正では「勤労青年教育の重要性にかんがみ定通教育の振興を図る」というこれまでの法律の目的を、「勤労青年」に加えて不登校経験者などを含む「多様な生徒の特性に配慮しつつ行う高校教育の実現」という現状に即した目的に書き換えられました。
【73年ぶりの定通振興法改正の3ポイント】
①法律の目的変更「多様な生徒への配慮」
中卒ですぐに働く勤労青年に高校教育の機会を与えるという目的から不登校経験者などを含む「多様な生徒の特性に配慮する」高校教育実現に変更。
②国・地方・学校の責任「責務の明確化」
全国的な教育機会均等など国の責務、地域の特性に応じた施策策定・実施を行う地方公共団体の責務、施設・設備や管理運営体制の整備を行う学校の責務。
③基本指針の策定「文部科学大臣が策定」
通信制高校の適正な管理運営に関する事項を文部科学大臣が基本指針として策定する。基本指針は公表され、通信制教育の全国的な共通枠組みとなる。
①法律の目的変更「多様な生徒への配慮」
中卒ですぐに働く勤労青年に高校教育の機会を与えるという目的から不登校経験者などを含む「多様な生徒の特性に配慮する」高校教育実現に変更。
②国・地方・学校の責任「責務の明確化」
全国的な教育機会均等など国の責務、地域の特性に応じた施策策定・実施を行う地方公共団体の責務、施設・設備や管理運営体制の整備を行う学校の責務。
③基本指針の策定「文部科学大臣が策定」
通信制高校の適正な管理運営に関する事項を文部科学大臣が基本指針として策定する。基本指針は公表され、通信制教育の全国的な共通枠組みとなる。
法律制定当時の通信制生徒の9割以上を占めていたのは、日中は工場、農家、商店、あるいは住み込みの丁稚奉公など、フルタイムで働く「勤労青年」でした。当時の生徒数は、定時制約53万人、通信制約3.1万人でした。
当時は、今で言う通信制高校という高校は存在せず全日制高校などの「通信教育の課程」として併設されたものでした。修了しても卒業資格は中卒のままだったのです。
それでも約3万人もの人がフルタイムで働きながら通信制で学んでいました。向学心の熱量の高さを感じます。通信制のみで高校卒業が認められたのはこの法律を境にその2年後に文部事務次官通達により実現しました。
また、当時の学校数は70校でしたが、すべて公立校で私立校はありませんでした。現在では、生徒数は当時の10倍(約31万人)、学校数は5倍(357校=公立82校、私立は0から275校へ)となっています。
私立高校の開校は、1957年に近畿大学附属高校(1987年に閉課程)が、1959年に東海大学付属高校通信教育部がそれぞれ開校します。学校教育法が1961年に改正され、独立した通信制高校が認められて以後の1963年に放送(ラジオ、テレビ)の利用を前提としたNHK学園高校が開校します。NHKラジオの「通信高校講座」(現在のNHK高校講座の前身)全国放送はこれに先駆けて定通振興法施行と同じ1953年から始まり、通信制生徒に大歓迎されました。
前述の東海大学付属高校通信教育部も1963年に東海大学付属望星高校として独立します。東海大学付属望星高校も放送(FM東海=現・TOKYO FM)を前提としていました。当時はFM受信機が市販されていなかったため東海大学工学部が独自に製造し生徒に無償貸与していました。1988年までTOKYO FMの18時30分から21時までのゴールデンタイムは高校通信教育講座だったといいます。
1965年に開校当初は大手企業で働く若年労働者を対象とした科学技術学園工業高校(現・科学技術学園高校)が開校します。
科学技術学園工業高校と同時に開局したのが同系列にあたる現在のテレビ東京です。テレビ東京は、深刻な経営難から1973年に一般総合局に変わるまでは通信制高校のための高校授業が放送枠の大半を占める教育局でした。今では想像がつきませんね。
◎働きながら学べるメリット
文部科学省が調べた「通信制高校に在籍する生徒の実態等」によると、次の表で見るように不登校経験者が約65%を占めるほか、ひとり親家庭の生徒約28%、心療内科等に通院歴のある生徒約21%などさまざまな状態や家庭環境にあることがわかります。
定通振興法改正で「多様な生徒の特性に配慮しつつ行う高校教育」の背景になっている状況です。現在の通信制高校が授業形態として一斉授業、個別指導、オンライン指導などを、通学形態として年1週間程度から週5までを、それぞれの組み合わせで選べるようになっている背景とも重なります。

正社員として働きながら通信制高校に在籍する生徒は、次の図で見るように1982年度当時と比べても10分の1程度に減少しています。32%だった無職の生徒は、70%に拡大しました。ただしパート等で働きながら在籍する生徒は狭域校(※)32%、広域校23%と拡大しています。
※狭域校:本校所在地に隣接1都道府県から入学できる学校、広域校:3都道府県以上から入学できる学校
正社員比率は3%から6%となりましたが、広域校での比率は16年度と23年度は「6.3%」と変わっていません。
一方、この間に広域校の学校数、生徒数は大幅に増加しました。学びリンクの調べでは、広域校(私立)は2016年度の学校数91校、生徒数98,194人から、2023年度には学校数124校(対16年度比36%増)、生徒数176,283人(同80%増)と急増しています。正社員で働きながら通信制高校で学んでいる人は広域校だけでも約6,200人から約11,100人へと増加していることになります。
私立広域校には社会人コースという働く人などを対象としたコースを開設する学校もあるため、忙しく働く人にも学びやすい環境が提供されています。環境整備があれば今でも働きながら学べるのは通信制高校のメリットの一つです。それを求める人も多いことがわかります。
改正法の目的に「勤労青年」が残っているのは至って正当な背景があります。

今も昔も共通の想いの一つは「高校を卒業したい」という願いです。70年前の生徒たちを支えたのは郵送でやりとりされたレポートの通信欄だったといいます。「仕事が忙しくて眠くてたまらない」という生徒の本音に、「君の努力は必ず実を結ぶ、一緒に頑張ろう」という先生からの返信だったといいます。
いろいろなところで進化した通信制高校ですが、生徒を支えるのは今でも一人ひとりを見る温かい教職員の視線と言葉に変わりはありません。
今回は、『「定通振興法」大幅改正 法律の目的が変わった」』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回は『「定通振興法」大幅改正 振興策はどうなる』についてご説明します。次回もよろしくお願いします。
次回シリーズもよろしくお願いします。

