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「気になりますね!通信制高校」
新刊書籍から考える不登校対応①
『不登校後を生きる』(樋口くみ子 著)

 2022年10月28日
 

◇◇「新刊書籍から考える不登校対応」(3回連載)
第1回 『不登校後を生きる』(樋口くみ子 著)ー不登校後を自分らしく生きるヒント


第2回 『マンガ脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』(加藤善一郎 著)
ー専門性をベースにした実践家からの提言


第3回 『マンガ脱・「不登校」3 起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし』(加藤善一郎 著)
ー専門性をベースにした実践家からの提言


このシリーズは、学びリンクから出版された2冊の近刊から不登校対応の考え方やその具体的な方向についてご説明します。
ご紹介する2冊の著者は、ともに大学に所属する研究者です。しかも一風変わった研究者と言えます。

今回ご紹介する『不登校後を生きる』の著者、樋口くみ子さんは自らの不登校・高校中退体験をベースにして執筆しています。このため文章のリアリティは半端ではありません。

次回ご紹介する『脱・「不登校」3 起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし』の著者、加藤善一郎さんは、岐阜大学の研究者であり、小児科臨床医です。さらに岐阜市に開設された不登校特例校 草潤中学校の「こころの校医」を務めています。医師・研究者としての専門性と実践家からのユニークな提言です。


第1回 『不登校後を生きる』(樋口くみ子 著) ―不登校後を自分らしく生きるヒント
◎20年を経て会ってみると…

『不登校後を生きる』著者の樋口くみ子さんは、現在岩手大学准教授を務めています。私が最初に会ったのは、かれこれ20年前、樋口さんが大検(現在の高卒認定試験)に合格し、22歳にして早稲田大学に入学する。と、いうときでした。
学びリンクが制作する大検受検ガイドブックの座談会に参加してくれたのです。

20年を経て再会したときは国立大学で教鞭を執っていました。専門は社会病理学、教育社会学ということでした。
20年前、大学入学こそ決まったが、その先のことはどうなるかわからないーと、言っていたのに。
どこかタイムスリップしたような感覚でした。映画『ラ・ラ・ランド』の最後の9分間を観ているような感覚になりました。

大学生時代は、ネットの大検予備校の講師をしていることはうっすら覚えていました。
その後、フェイスブックで“友だち”になりときどき英語での書き込みを見つけていたので海外で暮らしているのかと思っていた時期もありました。

この本は、大検(高認)受検を決意した時期からの樋口さんが工夫してきた自分らしく生きるためのヒントにあふれています。

樋口さんは、中学、高校で不登校を繰り返した後、高校中退し、4年半の中卒フリーターを経て、22歳で大学進学、その後一橋大学大学院に進学します。複数の大学講師などを経て現職となります。

九州の出身で、中2の秋、修学旅行中に受けたいじめがきっかけで不登校となります。適応指導教室などを経て遠方の高校に進学します。高校時代に留学したオーストラリアで、現地生活にとてもなじみ養子縁組寸前までいきます。しかし、その後一時帰国した際に友だちの説得で日本の高校に復帰。復帰はしたものの、こちらはなじめず2年生の冬に中退します。その後、翻訳家を目指そうとするなど紆余曲折があります。

今回不登校後を迷わず生きようとする人たちのために書下ろしてくれたその主な理由とは――「私自身、どうすれば自分を活かすような人生を送れるのか、その手掛かりがあれば、もっと楽な人生が送れたと思う」といいます。

本書は、次の3ポイントで構成されています。

(1)私たちが生きる社会に関する学問(社会学)のうち不登校経験者や高校中退者に役立つ知識
(2)私自身が不登校研究を行うなかで得た知識
(3)私自身の人生を振り返って個人的に「これは役に立った」「あー、もっと早く気づけばよかったのに!」と思うこと

ーーの3つです。

◎不安要素に合わせた対策を紐付け

不登校後の思いは人それぞれです。不登校後を自分の考えで、自分の足で生きてきた樋口さんの文章は実に具体的です、モヤモヤした心の整理や不安の軽減には間違いなく役に立ちます。

下の表は、本書に収録されているものです。不登校後をいかに切り開くかという方向が示されています。
不安と思う要素を、A教科学習の経験、B教科学習以外の学校経験、Cさまざまな社会での諸経験と分類し、その対策をまとめています。

例えば、A教科学習の経験がなかったら、「学校に行かなかった分の教科学習をどうする?」という具合に紐付けられたヒントや具体例がわかるようになっています。
こういう整理された対応策が社会学者ならではの指摘となっています。



本書は、不登校を単にNGとする価値観から一定の距離を置くための4コママンガ、イラストなども多数収録しています。 4コママンガで最初に出てくるのが次の「日本は進路変更が容易」という4コマです。目から鱗が落ちるようなものや重い気持ちになりがちなテーマを気楽に考えられる4コマ、イラストも多数収録しています。

今回は、「『不登校後を生きる』(樋口くみ子著)―不登校後を自分らしく生きるヒント」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は、「『マンガ脱・「不登校」3 起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし』(加藤善一郎 著)―専門性をベースにした実践家からの提言」についてご説明します。
新シリーズもよろしくお願いします!