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「気になりますね!通信制高校」
新刊書籍から考える不登校対応②
『マンガ脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』(加藤善一郎 著)

 2022年11月17日
 

◇◇「新刊書籍から考える不登校対応」(3回連載)


第1回 『不登校後を生きる』(樋口くみ子 著)ー不登校後を自分らしく生きるヒント

第2回 『マンガ脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』(加藤善一郎 著)
ー専門性をベースにした実践家からの提言


第3回 『マンガ脱・「不登校」3 起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし』(加藤善一郎 著)
ー専門性をベースにした実践家からの提言


このシリーズは、学びリンクから出版された3冊の近刊から不登校対応の考え方やその具体的な方向についてご説明します。
今回と次回にご紹介する『マンガ脱・「不登校」』は、シリーズ3作となります。シリーズ1は、2018年に発行されとてもたくさんの読者の皆さんに読んでいただき増刷を重ねてきました。著者の加藤善一郎さんは、岐阜大学教授、小児科医師でもあります。


第2回 『マンガ脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』(加藤善一郎 著)
―専門性をベースにした実践家からの提言

◎「教育医療連携」の視点から

まず、本書は『脱・「不登校」』というタイトルですが、これは「<学校に行かないこと>(不登校)から<脱しよう>」と言っているのではありません。本書の主旨は、「学校に行かないことで生じる種々の非常に困った誤解を含んだ状態」から脱することにあります。

シリーズ1は、私が直接編集担当でした。不登校の子どもたちにとてもていねいに対応している大学教授(医師)がいる、という話が学びリンクに伝わって来て会いに行ったのが書籍制作のきっかけでした。初対面でしたが、とても穏やかな対応でわかりやすいお話を聞くことができました。

そこで、「一般の方に向けて本を書いてほしい。できればマンガで」とお願いしてみたところ、その場で快諾をもらうことができました。それがこのシリーズ3作のスタートでした。4年前のことです。

1作目の担当にはなりましたが、明らかに激務をこなしている著者のスピードのほうが早く、編集の私が追いつけない状態でした。シリーズ2、3は学びリンク編集長が担当してくれたので、2、3と連続でスピード感をもって発行することができました。

シリーズ1制作当時は、月に1回以上は岐阜に打ち合わせに行っていました。
実に濃密な日常を送っている方だと感じました。大学教授ですから、講義、研究、学会はもちろん、臨床医として患者の診察も行っていました。その一方で、シリーズ1の中にもありますが、ODで診療を続けている家族を誘って近所の長良川に釣りに行ったり、川原でバーベキューしたりしていました。しかも、午後から有給を使ってといった具合に。「子どもたちの顔色が一気に明るくなる」というのがその動機でした。

「(そんなに忙しくて)睡眠時間はだいじょうぶなんですか?」とたずねたことがあります。
雑談でしたが、睡眠には「質」があるので、時間の長さよりそれを考えたほうがいいですよ。こんなアプリ(「スリープサイクル」というアプリです)が便利ですよ、とアプリを紹介されました。

それまでは、睡眠の「質」ということなど考えたことがなかったのですが、どんなものを紹介してもらったのか試しに使ってみました。その結果―。見事にはまりました。いまでは手放せないアプリになっています。
睡眠にもそれぞれの人に合った質があり、それを理解していることが日常生活のゆとりにつながると知りました。

加藤さんは、ODや不登校の子どもたちの困り事を解消していくためには、教育現場と医療現場双方が歩み寄り、互いの視点や疑問をぶつけあう活動や共通認識を深めていく「教育医療連携」が不可欠としています。本書もその視点にたってマンガ原作、執筆を行っています。
21年に開校した不登校特例校「岐阜市立草潤中学校」では、「こころの校医」という役職を得てその実践にも関わっています。

◎ほとんどは「OD複合型」

シリーズ2・3では、主人公まさや君の中1から中2(シリーズ2)、中3から高校進学後(シリーズ3)までの物語を描いています。

前著発行から3年が経ち、外来でも『マンガ 脱・「不登校」』を片手に受診される方が増え、受診される方がOD・検査・治療法への理解をすでに持たれていて、比較的スムーズに診療が進むことが多くなってきたといいます。

しかし、「治療を続けても症状が良くならない」「症状が良くなっても登校に結びつかない」といった誤解が、保護者の方や学校の先生、さらには医療者の間でも多くみられるようになっているとも指摘しています。シリーズ2は、そのあたりの背景についてアプローチしています。

OD患者さんには、ODがメインの病態で、その症状が改善されるだけで登校に結びつく「OD単純型」と、ODとは別のプラスアルファの要素も一緒に考えなければならない「OD複合型」とがあるとされます。
実は加藤さんが診ている患者さんのほとんどが「OD複合型」といいます。こうした「併存症の問題」について、今回のシリーズ2、3を通して詳しく解説しています。

例えば、保護者や学校の先生の中には、「こだわりが強い子がODになりやすい」などと、本人の性格や特性がODの原因であるかのように誤解されている方がいます。しかし、ODは本人がもともと持った「体質」であり、この体質と本人の特性やキャラクターはまったく別物として考えていかなければなりません。それらを踏まえた上で、本書では、休養や薬の調整によって身体と気持ちを整える「内的環境調整」、周囲の理解や配慮を求める「外的環境調整」の両面のアプローチについてわかりやすくマンガと解説で説明しています。

今回は、『マンガ脱・「不登校」2 起立性調節障害(OD):長期化する「OD複合型」への対応』についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は、『マンガ脱・「不登校」3 起立性調節障害(OD):特性を認め合う「おたがいさま」のまなざし』についてご説明します。
新シリーズもよろしくお願いします!