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数値化されない温かさ、優しさこそが、生きていくための技術になる

ー先生が子どもたちと接していて感じること、伝えたいことをお聞かせください。

僕は、自分の子どもたちに『子どもらしくあってほしい』と思っていました。だからうちの子は近所でも評判の、素直で、すぐ泣いちゃいそうな、子どもらしい子どもでしたよ。

勉強なんかも、小学校1年生は1年生の内で学んで感じられることを大切にしたらいいと思います。最近は1年生になったら2年生の内容、2年生になったら4年生と、どんどん先取りさせていますよね。そういうやり方もあっていいけど、あまりいい発達の仕方じゃないなぁと感じますね。きちっとステップを踏んで、成長していってほしいと思います。

僕は、卒業した中学校で講演をすることもありますが、中学生には「高校のための準備ばかりしていないで、今できることをやりなさい」と話します。「未来のために今があるんじゃないんだよ、今は今のためにあるんだからね」と。

今、平均寿命が90歳近くあるのだそうです。子どもたちはこれから70年という長い年月を生きていかなくてはいけない。しかも今は、AIをはじめIT技術が進化してきているから、今までとは全然違う70年が子どもたちを待っています。そういうなかで、どうやって生きていけばいいのかは誰にも分からないですよね。いわゆる頭の良さや、記憶力みたいなものはコンピューターと比べたら負けますよ。

でも、日本は今、なんでも数値化でしょ。何かを評価するために基準が欲しい。子どもたちには、そういった基準になるものがないから、学力や偏差値といった数値で区別したくなる。でも、それはとっても単一的で馬鹿馬鹿しいものだってことは、もうみんな分かりきっていますよ。

例えば「親切心」っていうものは数値化されないですよね。これから先、その人の価値になるものは、そういう人間的な優しさや柔らかさ、温かさだと思います。その人間的な魅力がこれからの70年で生きていくための技、技術になるのではないでしょうか。それは、どんな学校であっても育ちます。先生方には、そうした人間的な温かみを一生懸命育ててほしいですね。




金田一秀穂Profile
言語学者。現在、杏林大学外国語学部教授。専門分野は外国人を対象とした日本語教育。日本語研究の第一人者。
上智大学文学部を卒業後、東京外国語大学大学院を修了。コロンビア大学やハーバード大学では日本語教師を経験。
現在はクイズ番組の解説や、NHK高校講座「ベーシック国語」などTV番組にも多数出演している。著書に『この「言い回し」で10倍差をつける』や金田一春彦と共編した『学研現代新国語辞典 改訂第4版』など。