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新着情報

2018年09月02日

基礎教育をすべての人に 首都大学東京で研究大会

 

基礎教育がすべての人に保障される社会を目指した基礎教育保障学会(会長:上杉孝實 京都大学名誉教授)の第3回研究大会が9月2日(日)、首都大学東京・南大沢キャンパス(東京都八王子市)で開催されました。基礎教育保障学会は夜間中学、識字教育、日本語教育、障害者教育など幅広い分野から研究者が集い、実践や政策提言などを目的として2016年に設立されました。大会は朝9時から1日にわたって行われ、基調講演のほか実践者、学習者によるシンポジウム、各団体や研究者によるポスター発表や実践報告なども行われました。

 

基調講演に登壇した元法政大学教授の山田泉さんは「外国につながる子どもたちの発達保障と基礎教育」と題し、日本語を母語としない人たちの事例や、外国籍の子どもたちに対する学校現場の課題について講じました。山田さんは「外国籍の子どもの義務教育保障について議論が起こるのは先進国の中でも日本と韓国くらい。他国では当たり前に保障されるものだから議論も起こらない」と指摘。日本の教育や学校文化、社会文化を根本的に変えることは、日本人の意識を多文化主義に変えることだと主張。また、この課題は現在の「不登校」「不就学」の問題を克服するための入口だと話しました。

 

 

シンポジウムは「基礎教育保障と夜間中学政策」をテーマに行われました。パネリストとして登壇した埼玉県川口市で川口自主夜間中学を運営する「埼玉に夜間中学を作る会」代表の野川義秋さん、北海道札幌市の自主夜間中学「遠友塾」を運営する「北海道に夜間中学をつくる会」代表の工藤慶一さんは教育機会確保法成立後の活動の動き、各行政機関の状況などについて報告しました。

 

千葉県松戸市、柏市の自主夜間中学で学ぶ2名の学習者は自身の体験や現状を発表。現在、定時制高校に通う33歳の女性は、過去に経済的な事情から通っていた高校を中退。家族との関係に苦悩しながら11年間ひきこもり状態にあったことを赤裸々に告白しました。その後、通っていた作業所の方から夜間中学を紹介され、そこでの学びが生きる糧になったと話します。女性は過去に自分の人生の色を黒色と例えた日々を振り返り、「今、不登校やひきこもりで悩んでいる人には、焦らなくていいよと伝えてあげたい。必ず支えてくれる人に出会える。私が出会った夜間中学は本当の母親のような存在」だと話しました。

 

 

パネリストらによるディスカッションでは来場者からも多くの質問が飛び交いました。一部の質問では、地元議会が全会派で夜間中学の設置に賛成しているにも関わらず、行政がなかなか動かないとの指摘が。そこで、この日、会場に聴講者として参加していた前文部科学事務次官の前川喜平さんが回答する場面も。前川さんは、「政治家にも行政にも様々な考え方の人がいる。その中で志ある人に働きかけていくことが大事。特に行政は首長に働きかけることが重要だ」と話しました。

 

 

 

会場には100名以上の来場者が集まり、実践者だけでなく、大学生などの姿も目立ちました。研究大会は毎年1度開催されており、第4回大会は来年2019年8月31日(土)、9月1日(日)に京都教育大学で開催されることが決まっています。