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ニュースの読み方・社会の見方⑧
「日韓の歴史問題は、感情的な報道にあおられないことが大事です」

 2018年12月19日

 
韓国元徴用工判決に対する新聞社説の見出し(Webサイトより編集)


日韓関係・日朝関係は、敗戦まで日本が朝鮮半島を統治(植民地支配)していたので今でも“歴史(認識)問題”と呼ばれる微妙な問題を抱えています。最近では、戦時中徴用工として日本企業で働いた人たちからの賠償請求を韓国の最高裁が認めたというニュースが大きく取り上げられました。新日鉄住金および三菱重工業に対して、韓国人元徴用工に賠償金を支払い、謝罪するようにと命じたのです。

日韓の間には元慰安婦問題もあり、二つの歴史問題がからんで日韓関係は大きく冷え込んだと報道されました。

よく「国民感情の衝突」という形で、日本と韓国の国民が感情的な敵対関係にあるように言う人がいますが、そう単純なものではありません。こういうときは、歴史と本質を冷静にみつめ、一つ一つの相互理解を積み重ねていくことが大事なのではないでしょうか。

徴用工に関する歴史を見ると、こういうことです。第二次世界大戦中、日本は朝鮮人労務者を動員し、徴用工として鉱山や軍需工場、土木工事などで働かせました。戦後、このときの未払い賃金や賠償金の精算および謝罪が問題になりました。

これを解決したのが、日韓基本条約と並んで1965年に日韓政府間で締結した「日韓請求権並びに経済協力協定」です。これによると、第2条で日韓両国間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」と規定されているのです。

このとき日本政府は、有償無償含めて5億ドルの経済協力を約束し、実行しました。このお金を元に韓国は経済発展を遂げたのですが、日本政府はこの中の無償の経済協力金3億ドルに賠償金も含まれるとしており、韓国政府もそれを認め、2009年には「日本政府に請求権を行使するのは難しい」という見解を示しています。

日韓協定が結ばれるときには日韓両国で激しい反対運動が起きました。だから両国民のすべてが納得して結ばれたわけではありませんが、国同士で結ばれた約束事は守られなければ外交というものが成り立ちません。そこで、国同士の立場では「1965年の約束を守り合いましょう」というのは当然のことで、もし変えるのであれば双方話し合いをするしかありません。

問題は、協定締結後も元徴用工の人たちに賠償金が払われていないということです。賠償金は韓国政府が支払うべきという主張も成り立ちます。また。日本政府も2007年頃までは協定が個人請求権に影響を及ぼすことはないという立場を示していました。つまり、元徴用工は個人として要求していいということになります。日本政府は、現在は個人請求権も含めて最終的に解決済みと言っていますが、協定締結のときに個人に関してはっきりと決めていたわけではないことがわかります。逆に、韓国政府は、初めは個人の請求権は「ない」と言っていたのが2000年頃から「ある」という立場に変わったそうです。

実際にひどい目に遭わされたのは元徴用工の人たちです。その人たちが何の個人保障も受けていないということを私たちは知るべきです。国の都合に振り回されて国民同士がいがみ合うのは悲しいことです。元徴用工の人たちが一番求めているのは、日本政府と雇用企業の心からの謝罪だということも受け止めて、戦争の悲惨さをお互いに確かめ合いたいものです。

新聞の社説やテレビ解説では「韓国は昔の約束を蒸し返すな」という主張も見られますが、マスコミの責任は国民感情をあおり立てることではなく、歴史と本質をきちんと伝え、お互いの国民が友好関係を続けるためにはどうすればいいか、考え合う場を提供することが責務だと思います。私たちも頭を冷やしてよく考えるようにしましょう。