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ニュースの読み方・社会の見方⑨
「メディアは “ご飯論法”が苦手」

 2018年12月25日

 
ご飯論法を解説する「国会パブリックビューイング」(YouTube)


「ご飯論法」って知っていますか? 今年のユーキャン新語・流行語大賞のベスト10に選ばれた言葉です。
この言葉は法政大学の上西充子教授が、国会質疑で論点をずらしたり、ごまかそうとする政府答弁を聞いて、次のようなやりとりと同じだと指摘したツイッターから始まりました。

Q「朝ごはんは食べなかったんですか?」
A「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」
Q「何も食べなかったんですね?」
A「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので・・」

あなたはどう思いますか。
質問者は「朝ご飯を食べたか食べなかったか」を聞いているのですが、回答者はご飯を「米」と勝手に解釈して論点をずらし、「米は食べなかった」ということをわざと曖昧な形で答えています。実はパンは食べたのだけれどもそれは言わないことで相手に「何も食べなかった」と思わせる戦法です。質問者はそこを詰めようとしますが、回答者は「食事」の定義がはっきりしないとして答えをはぐらかします。このまま時間切れになると、パンを食べたという事実がはっきりしないまま終わってしまうでしょう。これと同じようなやりとりが国会で繰り返し行われている、と上西教授は批判したのです。
みなさんなら最初から「朝ご飯はパンを食べました」と答えるでしょう。国会という場は不思議なところです。

国会審議では、働き方改革法案に含まれる「高度プロフェッショナル制度」ができると過労死が増えるのではないかという議論で次のようなことがありました。

「理論的に言えば、4週間で最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は24時間働かせることができる。法律でそれは排除されているか」という野党議員の質問に対して、厚生労働大臣は「働かせるというのではなく、あくまでも本人が自分で仕事を割り振りして、より効率的な、そして自分の力が発揮できる状況をつくっていくということ」と答弁。「法律上禁止されているかどうか」と何度も詰め寄る野党議員に対してyesかnoかを答えず、「法の趣旨を踏まえた指針を作り、それに基づく決議をするので指摘されたようなことにはならないだろうというふうに思います」とはっきりした説明をしませんでした。
また、高度プロフェッショナル制度を法案からはずして欲しいという「全国過労死を考える家族の会」の要望を伝えた野党議員に対して、安倍晋三首相は「政府としては全国過労死を考える家族の会の皆様を含め、過労死をなくしたいとの強い思いを受けとめ、働き方改革関連法案の成立に全力を挙げているところでございます」と答えました。首相答弁は、過労死が増えないように制度をはずして欲しいという要望に対して過労死をなくすために法案を作るということで、何の問題もないような説明だという批判が出ました。

長くなるのできちんと紹介できませんが、上西教授は「国会パブリックビューイング」という活動を行っており、動画で解説しているので以下のサイトで確かめてみてください。
https://youtu.be/pDqswKSfBrw

実は、メディアはこのような“ご飯論法”を伝えるのが苦手です。表面の言葉をいくらうまくまとめても実態を表現できないからです。読者(視聴者)がいらいらするのはこんなときです。前記の安倍首相の発言だけを伝えると何も問題はないと思ってしまう人も多いのではないでしょうか。
そこで必要になるのが、新聞の解説記事やテレビの特集番組、解説コーナーです。マスコミには調査報道という伝統があります。実態に迫り、裏の事情も暴いて見せようと相当なエネルギーをかけています。時間がかかったり、論理的で難しかったりするかもしれませんが、ご飯論法対策には効果的です。