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「気になりますね!通信制高校」
これから通信制高校を選ぶ人に覚えていてほしい8つのこと③
学費無償化と全日制高校とのイコールフッティング

 2025年9月22日
 

◇◇「これから通信制高校を選ぶ人に覚えていてほしい8つのこと」(4回連載)
第3回 学費無償化と全日制高校とのイコールフッティング

このシリーズでご説明しているのは通信制高校をこれから選ぶ皆さんに覚えておいてほしい8つのことです。1回あたり2項目ずつ説明していきます。 今回は、5.学費(教育費)無償化への対応、6.全日制高校とのイコールフッティングの2項目について説明します。

『通信制高校をこれから選ぶ皆さんに覚えておいてほしい8つのこと』

1. 快適な居場所を選ぶ
2. 親身な教員と指導力のある教員
3. 不登校、起立性調節障害、発達障害への支援
4. 女子生徒に期待される学びの場


※今回は、5と6を説明します
5. 学費(教育費)無償化への対応
6. 全日制高校とのイコールフッティング

7. 進路決定率を高める
8. 卒業後を見越した在学中進路指導と卒業生支援

《2025年度通信制高校関連の指標(生徒数、学校数など)はコチラ

◎就学支援金額がなぜ決まらないのか

授業料を減額するための高等学校等就学支援金(以下、就学支援金)は、今年度から昨年度まで世帯年収約910万円以上の方を対象外としていた所得制限が廃止されました。高校生等世帯のすべてに就学支援金が支給されています。

全国私立通信制高等学校協会(私通協)の調べによれば、23年度時点で私立通信制高校生世帯の就学支援金受給状況は、加算額受給50.3%、標準額受給24.8%、受給対象外24.9%でしたから、対象外だった四分の一の世帯も就学支援金を受け取ることができました。
公私で見れば、公立校は課程に関わらず就学支援金によって実質的に授業料無償化が実現しています。

ご存知の方も多いと思いますが、就学支援金は26年度から拡充される予定となっています。私立全日制高校生等の世帯には、上限額が39万6千円から45万7千円に引き上げられ所得制限もなくなります。

では、私立通信制高校生世帯への就学支援金はいくらになるか?

中学生が高校選びなどを本格化するこの時期でも決まっていません。

文部科学省は8月末、26年度予算の概算要求を公表しました。高校授業料の無償化の拡大については、政治主導の制度設計が間に合わず金額を示さない「事項要求」としたのです。事項要求とは聞き慣れない言葉ですが、各省庁が翌年度に実施する事業項目(事項)だけを記載し、具体的な予算金額を示さずに要求することを指します。
文科省の概算要求の該当ページには24年度の予算額が記載されているだけで、26年度要求・要望額欄には「事項要求」とだけ書かれています。

文科省は今年度初めから通信制高校生への就学支援金額を示せないのは予算額が決まらないからと説明してきましたが、その予算編成自体を行わないことにしたのです。金額は「年末の26年度予算の編成過程において成案を得て実現する」と文科省自らは他人任せの立場を示しました。

これから高校進学先を選ぼうとする人には、通信制高校生への就学支援金がいくらになるかは重要な判断材料の一つです。例えば、この機会に全日制高校等と同額になるのか、通信制高校生対象は別額ならその金額がいくらになるのか。現状では学校側も説明できない状態です。

この就学支援金の事情のように通信制高校関連の情報がなかなか伝わってこない現実があります。その一面もありますが、通信制高校は後回しにしても特段のクレームもないと政府・行政から思われています。

また『教育新聞』の報道によれば、9月10日に開かれた自民党の「教育・人材力強化調査会」(会長:柴山昌彦元文科相、埼玉8区選出衆議院議員)が就学支援金拡充を当面の課題とした高校無償化の方向に対して「広域通信制高校を対象外」とする考えを示したとされています。
高校無償化と言っても現時点では授業料を無償化するというレベルで、その他の学費(入学金、施設設備費、教育充実費その他)についてはまだこれからです。 その高校無償化の入り口に過ぎない段階でこのような見解が示されるのはすでに無償化を否定する結論を前提としているように思います。

就学支援金のような通信制高校生全体に関わる問題は、1校の問題に矮小わいしょう化するのでなく通信制高校全体で対応しない限りこのような状態からは抜け出せません。



◎無償化拡大は評価しない!?

就学支援金が拡充されれば、学校を選ぶ側の生徒・保護者の皆さんの選択肢が広がります。
一方、学校側はどう思うか? 朝日新聞が今年6月から7月に全国の高校4,949校を対象に無償化拡大について聞いた調査があります。回答数・率は791校・16%(公立594校、私立192校、国立5校)でした。
調査結果によると、無償化拡大を「評価しない」「どちらかと言えば評価しない」が合わせて61%と半数以上となりました。

なぜ??? と思いませんか。 理由は案外単純でした。
無償化拡大の影響に関する設問の一つ「公立の志望者が減る」には、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」が合わせて86%でした。
無償化となって進路選択の幅が広がると公立全日制高校志望者が減るのです。

各地で行われている中3生の進路調査で、ここ数年公立全日制高校への志望率が各地で過去最低となっていることを考えるとこの予想は正しいと思います。
が、それなら何か巻き返し策を考えたほうが良いでしょうし、いままで学費格差のうえにアグラをかいていた状態だったと反省したほうがこれから先の展望が開かれると思います。

学校選びの場合でも格差が影響するケースがけっこうあります。就学支援金の金額もその一つです。今年春先に起きたサポート校への通学定期券を発給しないというJRの対応などもそのケースです。

就学支援金や通学定期券は、表から見てもわかる格差ですが、学校運営の裏側で起きている格差があります。こちらも大きな格差と言えます。

私立通信制高校の収支を見ると収入の多くは生徒等納付金です。皆さんが支払った学費が約84%を占めます。ところが、下の図で見るように私立全日制高校の場合はこれが約46%となっています。
同じ高校なのになぜこれだけ異なるかと言えば、図のオレンジ部分の格差です。この部分は、国や自治体から学校に支給されている経常費等補助金額が占めています。通信制高校約6%に対して全日制高校は約38%となっています。

経常費とは、私立学校を運営していくために必要な人件費や教材費等のことです。経常費等補助金によって保護者の負担軽減、教育条件の維持向上や学校経営の健全性向上が図られており、私立学校にとっては非常に大切な補助金です。


経常費等補助金額は、生徒1人当たり換算で広域私立通信制高校22,800円、私立全日制高校で465,200円と約20倍の開きがあります。



今シリーズでお伝えしているように、通信制高校には不登校を経験し新たな気持ちで学校生活を送ろうとする生徒、起立性調節障害など体調面で課題を抱えながら通信制の柔軟な仕組みに期待する生徒、発達障害などを抱えながら自分らしく学校生活を送ろうとする生徒など多様な生徒が在学しています。

その一人ひとりに対応するために快適な居場所づくり、親身な教職員の拡充、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置などが進められています。また、ネット配信の充実や多様な生徒に対応するための教務・校務管理システムの導入も進められています。

通信制だから経費がかからないという時代ではありません。
つまり経常費等補助金額が全日制と約20倍も開きがあるという正当な理由は見当たらないのです。イコールフッティング(公平)な待遇を通信制高校が目指すことが課題となっています。

今回は、「学費無償化と全日制高校とのイコールフッティング」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?

次回は、「進路決定率と卒業後を見越した在学中進路指導」についてご説明します。
次回もよろしくお願いします。