「気になりますね!通信制高校」
生徒数が多い、少ない!? それって通信制高校の実力?②
生徒数1,000人以上36校の“実力”
2021年12月1日
◇◇生徒数が多い、少ない!? それって通信制高校の実力?
第2回 生徒数1,000人以上36校の“実力”◇◇
学びリンクがまとめている通信制高校生徒数データをもとに今回もご説明します。今回は、2021年度に生徒数1,000人以上の規模を持つ私立通信制高校の特徴です。生徒数1,000人規模。――どう感じるでしょうか? 1校あたりの平均生徒数は全日制624人、定時制117人ですから、それに比べると“大規模校”のような印象になりますが、通信制高校の場合は生徒が本校だけでなくほかのサテライト施設にも分散するためそれほどの規模にはならないのが一般的です。今回は、そのあたりの背景もご説明します。
◎伝統校も人気トレンドへ変化
21年度に生徒数が1,000人を超えている私立通信制高校は36校あります。36校の合計生徒数は、約12万3,000人と私立通信制高校生の約7割を占めています。
多様なニーズを持つ通信制高校生の意向を反映して、学び方や学ぶ内容の幅を広げてきたのはある程度の生徒規模を持ったこれらの学校という見方ができます。
通信制高校の主流となっている「通学できる通信制」「集中スクーリング」「インターネット授業」「サテライト施設開設」「専門教育コース」「エデュテック活用」「eスポーツ」などを見ると、その先駆けとなっています。
開校年順に見ても、それぞれの時代を反映する学校が名前を連ねているのがわかります。
前回のメルマガで通信制高校の生徒数増を牽引しているのは5グループの広域通信制高校だとご説明しました。広いエリアから入学できる“広域校”は、今でこそ私立通信制高校の約7割を占めていますが、1990年以前は5校しかなく「広域5校」と呼ばれていました。
その5校中4校は、今でも1,000人規模を維持しています。その4校とは、東海大学付属望星高校(東京都、開校1959年、以下同じ)、NHK学園高校(東京都、1963年)、科学技術学園高校(東京都、1964年)、向陽台高校(大阪府、1964年)となります。
これらのいわば“通信制伝統校”も多様な生徒ニーズに対応するためのさまざまな施策を進めています。 NHK学園高校は、全国に32校の協力校、7か所の集中スクーリング会場をはじめ、生徒が日常的に利用できる「まなびや」というサテライト施設を札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡に開設しています。東京都国立市の本校には週3日通学できるコースも開設しています。約2,600人の生徒が在籍しています。
科学技術学園高校は、高等専修学校など技能連携している学校が23校もあり、これらの学校では高等専修学校卒業と高校卒業の両方の資格を取得できます。東京都世田谷区の東京本校では、週5日、週1・2日、半期6日間登校の「eラーニングコース」などの通学日数が選べ、さらに起立性調節障害などで午前中の登校が難しい人のために「イブニングクラス」も用意されています。学習内容でも初級プログラミング、DIY、声優などが学べる「クリエイティブレッスン」が開講されています。約3,300人の生徒が在籍しています。
科学技術学園高校は、伝統校ながら最近の通信制高校の“人気トレンド”を積極的に組み入れています。同校には、名古屋と大阪に通学できる分室があります。
◎サテライト施設と集中スクーリングの先駆け
前回のメルマガで生徒増を牽引している学校の特徴として広域校と、もう一つお伝えしたのがサテライト施設の開設数でした。
通信制高校生が本校以外で学べるいわゆる「学習センター」を開設した先駆けが1999年に開校した星槎国際高校(せいさ、北海道)です。現在は、約6,000人の生徒が在籍しています。全国に30か所の直営サテライト施設を置き、そのうち25か所でのスクーリングができます。技能連携校も42か所と最も多くなっています。
身近な事柄を対象に、生徒自身が考えることを促進する「共感理解教育」が特徴です。学びリンクの合同相談会でも同校在校生、卒業生がボランティアとして関わってくれ来場者の皆さんからのご質問にも応じてくれています。
生徒数1,000人以上が在籍する36校のうち35校は広域校なのですが、1校だけ狭域校(1~2県のみから入学可)があります。池上学院高校(北海道)です。狭域校なのですが、北海道という広大な土地柄もあり札幌本校以外に道内7都市にサテライト施設を開設しています。約1,100人の生徒が在籍しています。
一方、年間1週間程度の宿泊型・集中スクーリングにより時間と場所の制約を解消する学び方をメインに取り入れた先駆けが2000年開校の八洲学園大学国際高校(やしま、沖縄県)です。現在は、約1,300人の生後が在籍しています。美ら海水族館、エメラルドビーチといった沖縄有数のリゾート地で開催される集中スクーリングはアクティビティも人気の一つとなっています。
通信制高校は、開校初年度であっても1年生以外に転入学・編入学による2年生、3年生が少なからずいるのが一般的です。その点では、学年制により開校から3年間たった時点で3学年全体がそろう全日制や定時制と異なります。
そうは言っても、開校初年度でいきなり1,000人以上の生徒が在籍する例はあまりありません。
その“異例”を成し遂げたのが、16年度開校のN高校(沖縄県)でした。開校初年度の約1,800人の生徒数は21年度に約1万7,500人とほぼ10倍となりました。
そして、グループ校となるS高校(茨城県)が21年度に開校しました。開校初年度約2,100人の入学者となりました。今年夏には、両校合計生徒数が2万人を超えるまでになっています。
N高校グループは「ネットの高校」をキャッチフレーズにしてネットコース生が比率としては多いのですが、一方で通学できるサテライト施設の開設も進めています。今年度19か所のサテライト施設は、来春14か所新設が予定されており33か所となる予定になっています。
今回は、「生徒数1,000人以上36校の“実力”」についてご説明しました。いかがだったでしょうか?
次回は、「新規開校とこれからの展望」についてご説明します。
次回もよろしくお願いします!