「気になりますね!通信制高校」
新設校インタビュー
ヒューマンキャンパスのぞみ高等学校 校長 重栖 聡司(おもす さとし)さん①
2022年7月15日
◇◇“学ぶ場所”の位置付けがかわり始めた①
新設校インタビュー:ヒューマンキャンパスのぞみ高等学校
校長 重栖 聡司(おもす さとし)さん①
「全ては子どもたちのために」“得意”を持つことが高校生活とその後を支える
地域と一体となった学校づくりを目指して今年4月に千葉県茂原市に開校したヒューマンキャンパスのぞみ高等学校(本文中、のぞみ高校)。姉妹校のヒューマンキャンパス高等学校(沖縄県名護市)同様に実践的な専門教育が特徴の全国から入学できる広域通信制高校で、25か所の学習センターを抱えています。
その初代校長に就任した重栖聡司さんは、地元出身で千葉県内の小中高大の教育現場とともに教育行政にも精通しています。新設校への校長就任はその集大成―。と、思いきやこれまでの“固定概念”は捨てて取り組むといいます。今回のメルマガは、その真意をうかがってみました。
(聞き手:メルマガ編集長 山口教雄)
◎「全ては子どもたちのために」と思って
千葉県は、高校設置基準の中に私立高校数は今後抑制すると謳っています。これまでは暗黙の了解でしたが、それが明文化されたなかで新設認可をいただいたということだけでも素晴らしいことだと感じています。
私は、地元の中学校教員としてスタートし長く勤めた茂原中学校では学年主任、教頭として千葉県の外房・九十九里地域の進路指導の難しさに直接触れてきました。その後千葉県教育庁教育振興部長在任時は、公私協の場にも参加し公立校と私立校の果たす役割についても議論させていただきました。
教育委員会で定年を迎えたのですが、心残りだったのが最後に地元の学校で校長をやりたかったということでした。
私が理念としてきたのは「全ては子どもたちのために」という単純な言葉なのですが、これを大事にしたいと思ってきました。教育委員会でもこれを基本に県の学校教育行政をやらせていただきました。
当時教育長で、昨年まで文部科学省初等中等教育局長をされていた瀧本寛さん(現文部科学省大臣官房付)とは公私でお付き合いさせていただいていてよく話しました。2人に共通したのも、「全ては子どもたちのために」でした。教育行政についても、従来はこうであったから、これでいきますという考え方はもう一切やめると。従来どうであったかは関係なしに、今の子どもたちにこの方法が本当にためになっているのか、一人ひとりの子どもたちが満足できるのかという観点でやらせていただきました。
◎「隠岐で民宿を…」と思っていたが
正直なところ、通信制高校校長は考えてもみませんでした。県教委を退職して、千葉大学教育学部教授として5年間、大学院で現職教員の大学院生を指導対象に働かせてもらいました。30代から40代前半の先生方が、どんなことを現場で考えていて、どんな悩みを持っていて、どんな成功をしているのかというようなことを中心にディスカッションしながらやらせていただきました。
実は私の重栖(おもす)という名字は、島根県の隠岐の島にしかないんです。全国に散らばっている重栖というのは、みんな一族なんです。それもあって千葉大退職後は、隠岐に帰って民宿をやるのが夢だったんです。観光に来てくれる方もいるので、民宿で触れ合っていきたいと考えていたんです。ところが、コロナ禍となり医療施設が不十分な島に首都圏から帰ってくるのは控えてほしいと…。
じゃあ、どうしようかと考えながら畑仕事などをずっとやっていました。確か、8月の暑いときでした。
旧知の茂原市の内田達也教育長が訪ねてくれて、「新しく設立する通信制高校の校長を探しているが、どうか?」ということでした。設立母体の学校法人佐藤学園から学校設置に向けて頑張っていくので地元で適任者はいないかという依頼があったのでしょう。教育長とは同期で「ウッちゃん」と呼ぶような仲なので、それもあって私に話があったのだと思います。学校誘致や設置の方向で動きがあるというのは全く知りませんでしたから驚きました。
一番悩んだのは…。私は、小中高大と経験しているのですが、通信制高校というのは経験したことがないことでした。2006年に千葉県立千葉大宮高校に通信制課程を開設し、その後全日制課程を廃止し通信制独立校にかえる際にその事務関係に携わったのですが、教育内容にまでは関わりませんでした。
そこで、校長としてどんなことをやりたいのかを文章としてまとめ、佐藤学園の方々に見ていただいたんです。佐藤学園が目指している方向と違っていないのであれば、せっかくいただいたお話ですから、お受けしましょうということをお伝えしました。
そして細川智吉理事長はじめ、佐藤学園の方々には、私の基本的な考え方を理解していただいたうえで校長就任に至っています。