【学びリンク公式SNS】
フォロー/登録よろしくお願いします!

X(旧Twitter)  Instagram  Facebook  YouTube  LINE 

新着情報

2018年02月24日

「多様な学び実践研究フォーラム」開催(東京・新宿)

 

フリースクールなどの多様な学び、学校外での学び場を運営する実践者、研究者が集う「多様な学び実践研究フォーラム」が、2月24日(土)、25日(日)の2日間、早稲田大学戸山キャンパス(東京都新宿区)で開催。参加者はフリースクールやフリースペース、シュタイナー教育、デモクラティックスクール、外国人学校、インターナショナルスクール、ホームエデュケーションなどの関係者で、その他にも研究者や学生、実際に多様な学び場で学ぶ子どもや保護者などが参加しました。今回で第5回目となる同フォーラム。2日間でシンポジウムや分科会などが実施され、各地の実践事例や課題の共有、今後の制度づくりについても話し合われました。

(主催:多様な学び保障法を実現する会/NPO法人フリースクール全国ネットワーク)

 

「合う・合わない」があるから選択肢が必要 “多様な学び”経験者ならではの本音も

 

24日(土)は、実際に多様な学び場で学んだ若者、実践者それぞれの視点からのシンポジウムが行われました。

 

前半に行われた「多様な学びで育った若者シンポジウム」では、5名の若者シンポジストが登壇。司会はフリースクールのスタッフでもある早稲田大学の4年生が務めました。

 

中学2年からホームエデュケーション(家庭学習)で学び、現在介護施設で働く34歳の男性は、支援団体から届く機関紙を読み、自らコメントを投稿する際などに読み書きを覚えたと話します。「勉強は必要と思えば自然と身につけようとするのではないか」と、学び方に場所は関係ないと主張。また、「家庭学習では社会性が身につかないのではないか?」という疑問に対しては、「アルバイトができる時間ができて、常識はそこで学んでいけた。社会性は何も学校だけで身につくものではない」と話しました。

 

東京都内のシュタイナー学校で8年間学び、現在鳥取県内の大学に通う21歳の男子学生。「シュタイナー教育では自ら発言し、議論できる機会が多かったが、大学でそうした機会が減り、物足りなさを感じる卒業生は多い」と話します。また、シュタイナー教育の特徴として、暗記や詰込み型の学習を行わないため、知識を問われる大学受験では苦労する側面があるとする一方で、「実際に大学に入ると、物事のプロセスや本質を捉えようとするシュタイナー教育がとても役立っている」と述べました。

 

コミュニティースクールやサドベリースクールを経て、高卒認定試験を取得した15歳の男性は、「オルタナティブな教育をいくつか経験したが、それぞれに特徴があり、その人によって合う・合わないが正直ある。だからこそ、学びを選択できる世の中になってほしいと思ういます」と訴えました。

 

それぞれ“多様な学び”を経験した者同士の共通点や本音も語られました。例えば、オルタナティブな居場所では、違いを認めてもらえたり、褒めてもらえることが多く、それが自分への自信につながった経験は大きな利点になっている様子。しかし、その一方で「自分ではいまいち納得していないレポートでも、スタッフから必要以上に褒められた」など、「褒められすぎること」への違和感を経験したエピソードなども語られ、「根拠のない自信が社会へ出ていく際の不安にもなっている」と、揺れ動く若者の正直な気持ちも吐露されました。

 

 

公設民営の実践者が行政との関係づくりを報告

 

後半に行われたシンポジウム「民間と自治体との連携・協議による“多様な学び場”づくり」では4名の実践者が登壇。「官民連携」を主軸のテーマとし、富山県射水市の委託により公設民営方式で居場所や掲示板、家族支援事業を行う「NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと」の明橋大二さん、神奈川県川崎市の指定管理事業で公設民営型フリースクール「フリースペースえん」を運営する西野博之さん、栃木県高根沢町で公民連携による適応指導教室「フリースペース『ひよこの家』」を運営する中野謙作さん、教育特区制度を活用してフリースクールから中学校を設立した「東京シューレ葛飾中学校」の奥地圭子さんが、それぞれの立場からの実践報告を行いました。また、事前の問題提起では、同フォーラムの実行委員長で早稲田大学教授の喜多明人さんが論点を整理しました。

 

官民協働を進めていく上での方針について、明橋さんは「首長や行政担当者が変わることで進めてきたことが止まってしまうケースもある。タイミングや風向きを読むことも大事」とする一方で、体制が変わっても継続していける根拠となる「条例の制定」などを地域で進めていくことの必要性を訴えました。また、西野さんは「様々な議論が起こるが粘り強く進めることが大事。また、行政側でキーパーソンとなる人物を手放さないこと」など具体的な事例を挙げながら意見を述べました。

 

多様な学びに関する近年の動きでは、2016年12月に不登校生徒への支援を明記した「教育機会確保法」が成立。議員立法によって成立した同法は、もともと市民活動による政策提言から始まっています。経緯には2014年に第1回目を開催した同フォーラムや、主催関係者のロビー活動による功績もあります。法律が成立した今、具体的な制度設計を国に示していくためにも、実践者たちによる今回のフォーラムの役割はさらに重要になってきています。