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仕方の“ない”ことと“ある”ことをわけて考える

起立性調節障害などを含めた、からだ・神経の体質というものは、両親の持つ体質の組み合わせで影響されます。ですから、子の特性や性格についても親に似ている部分もあります。顔が似たり、アレルギー体質が似るのと同じように、遺伝子の組み合わせで、基本的な部分が決まってきます。

私は、研究面では、原子レベルでの立体構造解析をメインに20年以上やってきました。小児科の疾患でも遺伝子だけではわからないことが多いので、そのさらに基礎となるたんぱく質とかDNAとかの原子立体構造を研究することによって病気の原因解明や治療薬の開発に関する研究になります。そういう研究を基にして言えば、体質とは、遺伝子とその産物であるタンパク質両者の原子レベルでの立体構造で決まっています。

遺伝子レベルで体質が決まっていて、それによる体調不良で本人の意思ではどうにもできない原因から不登校状態であるのに、本人が責められたり、場合によってはお母さんが責められたりしてしまうんですよね。だから外来でお話するのは「あなたが悪いわけじゃないよ」ということです。特に「お母さんが悪いわけじゃない。自分を責めないで欲しい」ということを絶えず言います。それこそ家庭が崩壊してしまいそうだと思って来院されますから……。

お母さんの気持ちは、本当に深刻です。お子さんが学校に行かないというだけで、ご家族みんなが破滅だと思うわけです。多くの場合、親の子育てが悪い、特に母親がダメだからと周りは口さがないです。不登校は、家族が振り返るチャンスでもあるので何も変わらなくていいよとは言いませんが、その前に本人の体質があることを考えたほうがいいと思います。

話は不登校と異なりますが、遺伝性の病気はたくさんあります。私は大学院生時代に遺伝性の代謝異常症という病気の研究していたのですが、30億あるDNAの配列の中で1個だけミスプリントがあるだけなのに病気になってしまいます。それは誰のせいでもない、親のせいでもないし、ましてや本人のせいでもないけど重病になって亡くなられていきます。自分の遺伝子変異がわかると、欧米の方は良かったと感じる方が多いそうですが、それは誰かのせいではなく、神の思し召しということも考えることなのでしょうが、とりあえず仕方がないことと割り切れるようです。偶然起こったことなのです。日本ではまだ遺伝子変異があるというと、少し余分な偏見が入りやすいところがあるのですが、それもだいぶ変わってきたと思います。私は普段から、肝心なのは「仕方がない部分」と、「仕方がある部分」、そこを分けて考えないといけないと思っています。



言葉にまどわされず、「困っている」ということを

普段、外来でお伝えしているのは不登校の本人は溺れかけて水の上でアップアップしてるような状態だから決して叱っても意味がないと言っています。溺れかけている状態の子に叱咤しても意味がないので、やはり助ける方向で考えましょうと話します。

中学生ぐらいになると、不登校状態の子でもいっぱしのことを言うようになります。親とか、先生とかも「それだけのことを言うのなら、こちらの言うこともわかるだろう。わからないのはおまえがわかろうと努力していないだけだ!」となりがちです。自分の言ったことから発しているとはいえ、その反撃は不登校になっている本人にとっては厳しいですね。子どもは、社会的に瀕死状態になっているのだとわかって欲しいだけなんです。

一方、親御さんも、わが子が社会的に瀕死状態になっているのを見ているからこそパニックになって厳しいことを言ってしまうので、親御さんも責めて欲しくないんです。我々「おとな」だって完璧じゃないのですから。

現実に、親子が今厳しい状態におかれているわけですが、『だいじょうぶ感』という言葉をご理解いただくことをきっかけにして、当事者である「あなた」と、各領域の支援者である「わたし、わたしたち」も、おたがい困難に直面しつつ生きている仲間です。「お・た・が・い・さま」だよね、と理解し合って、すこしでも楽しい一歩を、というニュアンスを伝えたいと思って日々過ごしております。

今回、学びリンクさんの活動を拝見させていただき、小児科医という立場で日々診療している者として、小中学生の子どもを持つ親としても、とても勇気づけられました。また、不登校や今後の進路に困っている方々に、新しい未来の選択を提案できると、とてもうれしく感じております。一方、高校進学を迎えようとする方には、すぐ近い未来として、高校生活の選択が提示できることを大変有り難く感じますが、今後は、可能であれば、小学生や中学入学時期の不登校で困っている方々へも「学びのリンク」が大きく広がっていくような発展を期待しております。貴重な機会をいただきありがとうございました。



関連文献

1)「不登校 小児科からのアプローチ ~発達特性と「だいじょうぶ感」~」障害支援研究 16:2015
2)「生のありよう ~いずくんぞ死をや~ 1)原子なわたし」障害支援研究 17:65-81(2016)
3)「生のありよう ~いずくんぞ死をや~ 2)生の区切り」障害支援研究 18:2-13(2016)
4)「生のありよう ~いずくんぞ死をや~ 3)ゆく河のながれ」障害支援研究 19(2017)in press

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