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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』24
「役割」があることの大切さ

 2023年4月17日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

「我が子に足りないのは学力でしょうか?やる気でしょうか?」

今、多くの若者に足りないのは「役割」ではないかと思います。
被災地や戦後の焼け野原をイメージすると「役割」は溢れています。何をやっても「ありがとう」と言ってもらえます。3.11の時には震災に対する準備やボランティアの受け入れなどが整備されていなかったので多くの人が「思い」だけで現地に赴きました。そこにはたくさんの「役割」と「ありがとう」がありました。
数年後、熊本で震災があった時にも多くの人がボランティアに向かおうとしましたが、3.11の教訓を活かそうと「今日は何人必要です」「今日は県内の人が必要です」と情報が流れました。「役割」(大変な事態だから何でもやりますよ!)という思いを見失ってしまった人がたくさん出ました。そんなにコントロールできているならば「役割」がないかもしれない。私は圏外だから「いらない」って言われた。「思い」で動くのではなく統制が取れた業務として動くようなニュアンスになりました。原動力が「思い」ではなくなったので、「賃金」を支払った方が良いのではないか?という議論さえでました。

整っていないからこそ「役割」があります。

現代の特に都会を歩いていると整いすぎていて、隙がありません。
履歴書を持って、100社回っても「役割」をもらえないかもしれないような雰囲気があります。
モノは百均に行けば手に入るし、技術や知識はネットを検索すればわかるので、現代においてはあまり価値がありません。そこで価値があるのが「役割」です。

その観点で学校を考えると戦後の「モノ」と「技術」「知識」がなかった頃にはぴったりのやり方ですが、現代にはそぐわないところがあります。かつては「役割」はたくさんあったので、そこで活躍するために「技術」や「知識」が必要でした。今は「役割」がないのに「技術」や「知識」を詰め込まれても誰も「ありがとう」といいません。

そもそも勉強は「あなたのため」「あなたの将来のため」であって、誰かに感謝されるモノではないからです。出口としての「役割」がなさそうな社会なのに「あなたのため」っていい続けてもそれでは生きていけないことは若者でも薄々わかっていることだと思います。

学びリンク株式会社 カウンセリング室主催の保護者会では「夏休みバイト」「春休みバイト」と称して、不登校の体験に関するアンケートを実施しています。そのアンケートは不登校で悩む全国の親子に生かされますし、通信制高校の合同相談会では掲示され、多くの保護者が写真を撮って帰ります。バイトですから当然お給料も出ます。中には「初給料だ!」といってお札と一緒に自分 の写真を撮って送ってくれる中高生もいます。

社会に必要とされている。自分自身の経験を書けば良いから特殊な知識が技術が必要ない。
そんな「役割」は飲食店などでバイトできない高校生にとってはかけがえのない「役割」です。その「役割」を全うした子たちは自分は役に立てると自信を持つことができます。

方程式が解けなくても漢字が書けなくても一生懸命に生きて経験したことは価値に変えることができる。そのメッセージをより多くの中高生に届けたいなと思っています。

そして、社会が「勉強だけやっていれば良い」という思考停止状態から抜け、子どもたちの目が輝いているうちに「役割」を通して、子どもたちと社会とがつながってほしいなと私は思います。