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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』21
「1番レジ」と「7番レジ」の違い

 2023年3月1日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

私は祖父と仲良しでした。祖父の家に遊びに行ったときにはお昼ご飯を駅のデパ地下に買いに行きました。大きなお店なのでレジが10番までありました。
いつもお弁当を買う人たちで混雑しているお店でした。そのお店でお弁当を選ぶと祖父はたいてい7番のレジに並びます。
1番レジは並んでいる人がいなくて、7番レジには3人並んでいたとしてもです。

そういう経験が続いたのである日祖父に聞いてみました。
「1番レジも空いているよ?」
祖父は珍しく嫌な顔をして「あっちは機械だ」と吐き捨てるように言いました。もちろんセルフレジなどないご時世ですから1番レジにも店員さんがいます。

私は7番レジに並び、店員さんと祖父のやりとりを良くみてみました。すると「この鯖のお弁当お好きですね? この前の幕の内はどうでしたか?今日はお孫さんと一緒なんですね!」のような会話をしていました。

後日、私はその店員さんが気になったので祖父がいないときに話を聞いてみました。すると、、、

「私のレジは列が長いでしょ?そして高齢者が多いと思いませんか?全員かどうかはわかりませんが、私のレジに並ぶ人はひとりぐらしだったり、普段の会話相手がいない人たちなんです。お弁当を買いにきているというよりは1日たった1回の会話を楽しみに来ている人たちなんだと私は思っています。」

1日ずっと誰とも会話をしない中でたった1回の「鯖のお弁当が美味しい」と感想を言う機会にそれほどの価値があるんだなと私は目から鱗が落ちる思いでその店員さんの話を聞きました。祖父が「機械だ」と言った意味も良くわかりました。
1番レジの人は「いらっしゃいませ」「いくらです」「お箸いりますか?」「ありがとうございました」しか言わない。それは店員さんとして当然の姿。

でも、7番レジに並ぶ人は違う景色を見ていたんだなと気づきました。

今回はあえて、祖父の話をたとえに書いてみましたが、

お子さんにとって、親や先生、私たち社会の大人たちが「1番レジ」なのか「7番レジ」なのか?これは重大な違いのように感じます。「宿題をやったのか?」「出席日数が足りない」「ゲームばっかりやって」どれも当然の会話、当然の姿。それでも7番レジを求めて並ぶ。そんな感情が不登校の子どもたちの中にもあるのではないか?
今日の私の対応は「正しさ」と「効率」を大事にするあまり「1番レジ」になってしまってはいなかったか?

高齢者と呼ばれる人たちがこの平和な状態、豊かな状態、システム化された状態の世界を作ってくれた。それに敬意を払うことなく「老害」と呼ぶ。
レジの店員さんたちの上司はスピードの速い「1番レジ」を評価するのかもしれない。高齢者たちはお弁当を買うくらいしか「7番レジの人」に貢献できないのかもしれない。

私たちが社会をまわしているのは「7番レジ」のような時間を人生の中でたくさん味わうためではなかったか?「1番レジ」だらけの社会で効率の良い機械がまわっていることが理想なのだろうか?

祖父は穏やかで感情的になる人ではありませんでした。
その祖父が珍しく嫌な顔をして「あっちのレジは機械だ」と吐き捨てたその感覚。それすらも私たちの中から消えてしまおうとしているような気がします。
中高生と関わっていても「その話はただの仕組みだ」そう思うことがたくさんあります。そして、その仕組みは人を幸せにする目的で作られているのではないのでしょうか?目的を忘れて、ただの仕組みを大事にするなら「それは機械だ!」と私も思ってしまいます。

中高生の中には本当に話し相手がいない子もいます。
高齢者と同じような気分で部屋にこもっているのかと思うと胸が苦しくなります。