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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』78
「何もしない」という愛情に迷いを感じるとき

 2026年7月17日

 


こんにちは、カウンセリング室の椎名雄一です。

ふだんカウンセリングしていて、気がついたことやよくある疑問などをテーマにお伝えしています。今日のテーマは、親の「何もしない」状態に迷いを感じるときの話です。

不登校のお子さんをもつ保護者の方からは、「このまま放っておいていいのか」「何か刺激を与えないと、さらに動けなくなるのでは」という切実な焦りの声をよく伺います。特に新学期など“世間が動くとき”がつらいですよね。

親心として「何かをしてあげたい」と思うのは当然の愛情です。しかし、不登校・ひきこもりの序盤において多くのお子さんが望むことベスト1位を知っていますか。実は「何もしないでほしい」です。

不登校・ひきこもり初期段階のお子さんの心は、たとえるなら「激しい嵐」が吹き荒れている状態。または「真っ白」で何も考えられない状態です。そんなときに外から「頑張れ」と声をかけるのは嵐の中を無理に歩かせるものであり、お子さんの体力をむやみに奪ってしまいます。

今回はこうした時期こそ覚えておきたい、大切な3つのポイントをお伝えします。

1つ目は、「正解を教え込む」のではなく「間を空けて待つ」こと
「やる気」「心の自発的な動き」が必要な問題には、本人が自分で答えを見つけるまでの“時間”が必要です。知識を教えるアプローチとは違います。虹ができる仕組みを解説されるよりも、「なぜだろう?」と自ら調べるまで待つ。その間によって、学びが深まるのと同じです。

2つ目は、「時間の流れ」から切り離してあげること
朝の光や時計の針とは、動けない子にとって「お前はどうなんだ!まだ動かないのか?」と責めてくる残酷な存在です。そもそも昼夜逆転は、世間との比較から自分を守るための防衛反応でもあります。この時期は世間の時間を忘れて、お子さんの時間軸で過ごせる環境を整えましょう。

3つ目は、身の回りのサポートを「淡々と」続けること
「何もしない」とは、放置することではありません。食事を運んだり、洗濯をしたりといった日常のサポートでは、余計なメモ・言葉を添えずに淡々と続けてみてください。それは「甘やかし」ではなく、お子さんにとっての「命綱」や「助け」になります。

保護者が“100段の階段”のゴールから手招きするのではなく、まずはお子さんが今いる段に降りる。その場所からお子さんと同じ景色を見ることを始めてみましょう。

そして保護者が「何もしない勇気」を持てたとき、お子さんは、はじめて自分自身と向き合う準備ができます。これまでは親の意見や評価がチクチク刺さるのが気になるばかりで、自分で考えることができません。親に忖度していても、未来は見えてこないのです。