椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』77
行動を評価せず、気持ちを伝える 〜少しずつ動き始めたお子さんへの声かけのコツ〜
2026年7月1日
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長い間、部屋に閉じこもりがちだったお子さんが、ある日リビングに顔を出したり、近所を散歩 したり、少しずつ動き始める姿が見えると、保護者の皆さんもホッとされることでしょう。
「やっと一歩踏み出してくれた!」「このまま学校に戻れるかも!」と期待する気持ちが自然に湧いてくると思います。
ただ、そんな時だからこそ、声かけには少し注意が必要です。せっかく動き始めたお子さんが、その言葉でプレッシャーを感じ、また立ち止まってしまうことも少なくありません。
今回は、お子さんの行動を「評価する」のではなく、「親の気持ちを伝える」ことで、お子さんが安心して次の一歩を踏み出しやすくなる声かけのコツについてお話しします。
なぜ「評価」は重荷になるのか?
お子さんがリビングに出てきたとき、「やればできるじゃない!」「ほら、外に出られるじゃない」と言いたくなる気持ちはとてもよく分かります。
実際、保護者の皆さんにとっては大きな進歩に見え、感激してしまうものです。
しかし、お子さんはまだ心の中で不安や葛藤を抱えていて、「これ以上求められるのでは」「もっと頑張らなきゃいけないのでは」と感じてしまいがちです。「やればできるんだから、明日はもっと頑張れるよね」というニュアンスが伝わると、また気持ちが萎えてしまうこともあるのです。
してくれた「行動」ではなく「気持ち」に目を向ける
そんなときに意識したいのが、「親自身の気持ちを伝える」ことです。
例えば、こんな言葉がけはいかがでしょうか。
「リビングに来てくれて(私は)うれしかったよ」
「一緒にご飯が食べられて、(私は)ホッとしたよ」
「あなたの顔が見られて(私は)安心した」
お子さんの行動に点数をつけるような言い方ではなく、親自身の素直な気持ちを伝えることで、 お子さんは「認めてもらえた」という安心感を感じられます。アイメッセージと言いますが 「(私は)そう感じた」と伝えることで「私の気持ちはそうだ」と伝えられます。
それが「もう一歩やってみようかな」という気持ちにつながるのです。ただ、気持ちにも期待が混ざりますから「圧」が少なからずあります。言い方を弱目にしたり、冗談を交えたりして、工夫するとなお良いです。間違っても「・・・だから頑張れ」のようにならないように。
小さな一歩を守ることが次の一歩につながる
保護者の皆さんに覚えておいていただきたいのは、「小さな一歩を守る」ということです。 せっかくリビングに出てきたのに、「じゃあ明日は学校に行けるね!」と先を急いでしまうと、 その一歩はすぐに引っ込んでしまうこともあります。階段におどりばがあるように、「ここまでよく進んだな」と少し振り返ったり、味わったりする場所、休憩する場所が必要ですね。
今できたことを大事にして、「今日はそれだけで十分」「ありがとう」と伝え、次のことは求めない。それが結果的に、お子さんが「このくらいなら、またやってもいいかも」と感じるきっかけになります。
実際に「今日できたのは明日もできるということではなく、まぐれかもしれない」お子さんの感 覚はそんな感じです。なので「凄すぎじゃない?」「今日のは出来過ぎだね」とユーモアを交えて「これが当然だとは思っていないよ」と伝えるのもコツです。それが「小さな一歩を守る」につながります。
お子さんが動き始めるのは、とても勇気のいることです。
その勇気を認め、支えるために、ぜひ「評価ではなく気持ちを(控えめに)伝える」という姿勢 を意識してみてください。お子さんが安心して進めるように、保護者の皆さんの一言が、大きな力になります。

