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椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』30
体験したことないことには口を出せない

 2023年9月1日

 


カウンセリング室の椎名雄一です。
日々皆さんとメッセージのやりとりをさせていただいたり、カウンセリングをする中で気づいたことや傾向などをこのコーナーでお伝えしています。

今日は「体験したことないことには口を出せない」というテーマです。

一般に政治や行政が出した方針は実際に普段生活しているいわゆる庶民と乖離があることがあります。あるいはテレビなどで報道されていることと本人が体験している事実が異なることもよくあります。

以前、台風15号によって千葉県の南房総市やその周辺の市区町村が被害に遭われたことがありました。
私の知り合いも多く住んでいる地域だったため、必要と思われる食料や水、ブルーシートなどを車に積み込んで現地に向かいました。木更津市に入ったあたりから信号が止まっていたり、電柱が倒れていたりとそこには非日常の光景が広がっていました。
情報源として使っていたのがTwitterでした。特に「私の家が壊れています大変です」というような個人のTweetを頼りにあたりの様子を探りながら進みました。そんな状況でしたのでその「私の家が壊れています」という人と連絡を取ろうとしました。「どんな状況ですか?」「車で近くまで行けそうですか?」と質問をし始めた時、「私は神戸に住んでいるのでわかりません」と返事がありました。どうやら拾った画像で「私の家が壊れて」とTweetしていたようでした。「千葉県の南の方が大変だから情報発信をしていた」と言われました。その家がどこにある家なのか?本物なのかも確認せずです。(実際にはdocomoやsoftbankのアンテナをつけた車が南房総市役所に入る流れに当たったので無事に食料などをおいてくることはできました)

現場から遠く離れた人同士ではあいまいに「こんなふうに大変だ」という情報をやり取りするだけで役割を果たした気分になったり、仲間と盛り上がることができるのかもしれません。でも、「今、その家の前にいますが?」という人にとってはこれほど迷惑なことはありません。

「不確かな情報」に対して、「遠く離れた神戸からの推測と感情」で情報発信をしてしまうのですから考えようによっては恐ろしいことが起きているなと感じました。

さて、それを不登校に置き換えてみるとどうでしょうか?
「教室で起きていること」「ゲームの中で起きていること」「その子の心の中で起きていること」 をちゃんと確認して、コメントをしたり、怒ったりしているでしょうか?

合同相談会で我が子の代わりに親が現状を語る場面はよくあります。
そんな時に親が話す言葉を聞きながら首を横に振り続けている我が子に気づかない親が少なくありません。目の前で本人が違うと言っているその親の言葉は何の話をしているのでしょうか?多くの場合、それはお子さんの問題ではなく、親の苦悩と親の希望です。

それは神戸から間違った情報を拡散して「私はいいことをしている」と言っている人に似ていませんか?現地でこの道を右に行くべきか?左に行くべきか?誰がブルーシートを必要としているのかを知りたい時に間違った情報を根拠に動くのはかなり迷惑です。

お子さんが通っている教室で行われていること。ゲームの世界。推しの世界で行われていること。 SNSの中で起きていることを知らずに自分の思い込みで口を出してしまったら、現場にいる人は辛い。それが不登校改善がうまくいかない大きな要因のひとつです。

ゲームについて「良い」でも「悪い」でもコメントをするならばゲームをある程度やってみてからの方が良い。「なぜ勉強をしない?」というならば無機質で愛のないレポートを数年間解き続けてみたらわかるかもしれない。

「口を出す」まえに「自分はそれを体験して知っているのか?」と自問自答してみるとお子さんと同じ景色が見えるようになってくると思います。遠回りのようですがズレた工夫をし続けることを考えると最短距離と言ってもいいほど有効ですのでぜひ試してみてください。