椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』62
子ども自身も「変われない自分」に焦っている時
2025年5月15日
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新学期が4月5月と進んでいくと「そろそろ何か変わらなきゃ」と思うタイミングが増えますね。進路や受験の話題が周りから聞こえてくると、保護者だけでなく、お子さん自身も「このままでいいのかな」と焦りを感じることがあります。
実際、ある中学生はこんなふうに話してくれました。
「遅れている勉強を頑張ったり、週3で学校に行ったり、散歩をして体力作りをしたり、自分なりに頑張って動いた。でも、その反動で疲れてしまって、また動けなくなって…そうすると、焦りが出てきて、どんどん自分を責めてしまうんです」
こうした声は、決して珍しくありません。
変わりたいけど動けない。動けない自分を責めてしまう。
このループに、お子さん自身が苦しんでいることも多いんです。
この焦りの原因は
今の自分とかけ離れている理想との比較です。
「みんなは頑張れているのに!」と思ってみてもこれまで動いていなかった自分ではいきなりそのステージには立てません。逆に動けない日があるのは当たり前ですよね。山登りと一緒で、「山頂まだかな」と思いながら登っていると、心が折れそうになります。でも、景色を楽しんだり、途中で咲いている花を眺めたりしているうちに、いつの間にか山頂に着いていることもありますよね。目標ばかりを見つめすぎず、今できることを一つずつ積み重ねていくことが大切です。
お子さんが焦っている時には、無理に「頑張れ」と背中を押すより、こう声をかけてみてください。
「今日できたこと、何かある?」
たとえば、「朝起きられた」「着替えられた」「家から一歩出られた」など、一見当たり前に見えることでも、今の子どもにとっては大きな一歩かもしれません。それを一緒に確認していくことで、少しずつ自己肯定感が育っていきます。
とはいえ、「そんな小さなことで?」と感じるお子さんも多いでしょう。
焦っているからこそ高難易度な行動ができないとダメだと思ってしまう。
それよりは
自分が今レベル1のリハビリ中ならば「起きた!」というのはプラス評価ですし、
自分が今レベル5のリハビリ中ならば「靴を履けた」というのがプラスかもしれません。
友達は今レベル20かもしれませんが、着実にレベルを1ずつ上げていけば数ヶ月でレベル20になることはできます。さらに21、22と上げてさえ行けるのです。
その近い未来のレベル10レベル20のための「朝起きた」には価値があります。
それを足りないと嘆いてしまうとレベル1で挫折してしまいます。
その意味でも将来のレベル20(その後も成長してレベル30)のための一歩をまずは認めてあげることはとても大事ですね。できれば現在のレベル相当の評価で今日できたことをメモして、「自分はよくやっている」と日々満足する時間は必要です。
そしてこれは保護者にも言えることです。
大まかな評価で「学校に行けたら成功」「行けなかったら失敗」ではなく、「今日は目を開けていた」「今日は起きようとした」「今日は起き上がった」「今日はおはようといった」「今日は着替えた」とお子さんの身の丈や現状では、それすら当たり前ではないという基準でお子さんを見てあげられると良いのではないでしょうか?