椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』68
子どもの“タイミング”に合わせるコミュニケーションのコツ
2025年9月22日
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保護者の皆さんから「子どもが話してくれない」「こちらの声かけに反応が薄い」といったお悩みを多くいただきます。その原因の一つに、“タイミング”の問題があります。今回は、子どものタイミングに合わせたコミュニケーションのコツについてお話しします。
子どもは大人とは異なるリズムで毎日を過ごしています。
特に思春期の子どもは、自分の時間や空間をとても大切にしていて、こちらの都合に合わせて動いてくれることはあまりありません。学校から帰った直後や、ゲームに夢中のとき、SNSのやり取りで気持ちが揺れているときに話しかけても、なかなかこちらを向いてはくれません。
「今すぐ話しなさい!」と迫れば、反発や無視といった形で返ってくることも少なくないでしょう。
では、どうすればよいのでしょうか。
まずは「今、この子はどんな気持ちだろう?」と観察することです。目が合わない、返事がそっけない、表情が曇っているといったサインは、「今は話したくない」というメッセージです。その時はこちらの都合を優先せず、少し時間をおいてみましょう。
例えば、小学生の低学年なら、気持ちの切り替えに時間がかかる子も多いです。
「ゲーム、終わったら教えてね」といった優しい一言で、子どもの気持ちに寄り添えます。
中学生や高校生の場合は、「今、少しだけ話せる?」と選択肢を与える聞き方が効果的です。
「夜に10分くらいでいいから話せるかな?」と予告しておくと、子ども側も心の準備ができます。特に高2など年齢が上がると、自分の時間を尊重されたい気持ちが強くなるため、無理に引きずり出すのは逆効果です。
では、もし声をかけたタイミングで「うるさい! 今は無理!」と拒否されたらどうするか。そんな時は、「わかった。タイミング悪かったね。ごめんね」と一度引いて、次のチャンスを待ちましょう。会話をした時に嫌な思いをしてしまうとそれ以降の会話がしにくくなります。
学校の先生方も、タイミングの見極めは大切です。登校直後や授業の合間ではなく、放課後や昼休みなど子どもがリラックスしているときに「今日調子どうだった?」と声をかけると、自然と会話が生まれやすいです。
実際に保護者の方からも、「夕飯の準備中に呼びつけたら怒られたけれど、夜に『さっきはごめんね』と伝えたら『別にいいよ』と返ってきた」「朝は無口でも、夜に話しかけると笑ってくれることが多い」という声が寄せられています。お子さんにとって落ち着いている時間帯がいつなのか、ぜひ観察してみてください。
すぐに使えるフレーズとしては、次のようなものがあります。
• 「今、いいタイミングかな?」
• 「ゲームが終わったら少しだけ話せる?」
• 「話したいことがあるんだけど、いつならいい?」
子どもとのコミュニケーションは、タイミングを合わせるだけで大きく変わります。無理に自分のペースで進めるのではなく、子どものペースに寄り添うこと。それが信頼関係を築くための第一歩です。
最後にひとつテクニックをご紹介しましょう。
「話したいことがあるだけれど、今がいい? 夕食後がいい?」と2択にしてみてください。
「じゃ! いま!」とか「じゃあ、、、夕食後」と答えてくれる確率が上がります。
2択にすることで、「どちらかを選ぶ」という意識が働き、「選ばない」という選択肢が見えにくくなるからです。機嫌良く、リズミカルに聞くほど成功率は上がります。ノリで答えてしまったとなるような聞き方をするほど良い反応を得られます。
保護者の皆さんが、子どもとの時間を楽しめるようになり、お子さんが「話したいな」と思った時に安心して声をかけられる関係が築けるように、心から願っています。