椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』70
叱る? 褒める? 迷ったときの選び方
2025年11月5日
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「子どもが宿題をしない」「約束を守らない」「だらだらしている」...。保護者の皆さんからは、こうした場面で「叱るべきか、褒めて伸ばすべきか迷ってしまう」というお悩みをよくお聞きします。「厳しくしないとダメでは?」「でも叱ると余計に心を閉ざすかも...」と葛藤される気持ちは当然のことです。今回は、よくある場面別に考えながら、「叱る」と「褒める」の選び方と長期的な関わり方についてお話しします。
まず知っておいていただきたいのは、「叱る」と「褒める」はどちらも必要だということです。
大切なのは「子どもが前を向ける言葉かどうか」という視点で選ぶこと。そして、どちらもその場限りではなく、長期的に関係性を育てるつもりで使うことです。
例えば、小学生の低学年が宿題をせずにゲームばかりしているとき。つい「いい加減にしなさい!」と怒鳴りたくなりますが、それは一時的に動かせても、根本的な改善につながらないことが多いです。まずは「今日は途中までやったんだね、それは頑張ったね」とできた部分を認め、「次はどうすれば最後までできるか一緒に考えよう」と促すのが理想的です。幼い子には「ここまでできたね、えらい! 次はここまでやれるかな?」のような、短く前向きな声かけが響きやすいでしょう。特にできている部分については1文字ずつ「この文字うまいね」「ここは丁寧だね」「これは工夫したんだね」と話していくイメージで関わるとやる気を出してくれることが多いです。もちろん小学校低学年くらいですが。
中学生・高校生の思春期の子どもは、親の言葉に反発しやすい時期です。「また怒られるだけ」と感じてしまうと、無視や無関心で応じる場合も少なくありません。努力しようとした気持ちなどを褒め、行動について限定的に叱るのが効果的です。「その考え方はとても良いけれど、この部分は困るよね」といった感じです。もし無言で反応しなくても、「聞いてくれてありがとう」とだけ伝え、長い目で見守ることも大切です。
褒めるときも、やみくもに褒めればいいわけではありません。「漠然とした褒め」や「過剰な褒め」は逆効果です。「褒めようとして準備している人の褒め言葉は嫌味にしか聞こえない」といっている子も多いです。大切なのは、具体的に行動を発見してから認めることです。「この行動の具 体的にはこの部分がすごいと思った」という褒め方です。
僕は講演業なので人前で話をしますが「今日のお話よかったです」と言われてもあまり嬉しくありません。どこが刺さったのか全くわからないからです。「今日も『昼夜逆転の話』まさにその通りだと思いました。家に帰ったら試してみます!」と言われると『昼夜逆転の話』を盛り込んでよかったなと思います。漠然とテンションで褒めるのは楽しい雰囲気にはなりますが、真剣に試行錯誤している人には刺さりにくいものです。
叱るとき、褒めるときのポイントを整理すると次の通りです。
<叱るとき>
・感情的に怒鳴らない
・行動を指摘して叱る
・短く簡潔に伝える
・その後のフォローの言葉も忘れない
<褒めるとき>
・できるだけすぐに伝える
・具体的な行動を言葉にする
・「ありがとう」という感謝を添える
・過剰になりすぎないよう注意する
学校の先生方からも、「厳しい指導の後に短くフォローしただけで、次の日から生徒の目が変わった」という声をよく伺います。クラス全体に伝える場合も、叱る場面は簡潔にしつつ、空気を 柔らかくするために「でも、みんな普段はよく頑張ってるよね」と一言添えるだけで雰囲気が変わります。個別に呼ぶときは、子どもが落ち着ける環境やタイミングも意識しましょう。
迷ったときは、「今この言葉で、この子が少しでも前を向けるだろうか」と考えてみてください。
間違っても大人の都合で「イライラするから気持ちをぶつけた」という叱り方にならないように気をつけてください。
子育ては「世話」ではありません。「育てる」のです。
この関わりでお子さんが「育つ」だろうかと常に考えてみると良いと思います。そうすれば自ずと褒めるだけでも叱るだけでも「育てる」には不十分だとなります。「育てる」ためには両方を適宜使っていく必要があるのです。

