椎名雄一先生コラム『不登校に効く心理学の話』71
不安が強い子どもたち 〜不安障害という視点で見る不登校〜
2026年2月12日
![]() |
「朝になると『お腹が痛い』と言って学校に行けない」「夜になると眠れずに泣いてしまう」...。そんなお子さんの様子に、戸惑いや苛立ち、心配を感じている保護者の皆さんも多いのではないでしょうか。不登校の背景には、実は子ども自身の「強い不安」が隠れていることがあります。
今回は、不安障害という視点で、子どもの気持ちを理解し、関わり方を考えるヒントをお話しします。
不安は誰にでもある感情です。ただ、それが生活に支障をきたすほど強い場合、不安障害と呼ばれることがあります。学校に行こうとするたびにお腹が痛くなる、吐き気がする、泣いてしまう...という子どもの多くは、単なるわがままではなく、強い不安が原因です。不安が体の症状にまで出てきてしまうと本人にもどうにもならない「気の持ちようではない」問題になってしまいます。そして、その不安も症状も本人から見たら「事実」です。「そんなの気にしなければ」とか「そんなことないよ」と言われても事実ですからお子さんは困ってしまいます。
相談に来られたあるお母さんはこう話してくれました。
「毎朝お腹が痛いと言うので怠けているのかと思い、厳しくしました。でも実はクラスで孤立していたり、先生が怖くて不安だったと知り、もっと早く気づいてあげればよかったと後悔しました」
不安の強い子に必要なのは、「なぜそうなってしまうのか」「そうならざるを得ないのか」に寄り添い、環境や気持ちの土台を整えることです。
ただ、中学生や高校生になると、恥ずかしさやプライドから自分の不安を口にしない子も増えます。その場合も、無理に理由を聞き出す必要はありません。そんな時に便利な言葉が「何か」という言葉です。「その苦しさを生んでいる何か」「涙の元になっている何か」「学校に行かせない何か」があるのかもしれないという話し方は「あなたが学校に行かない」ではなく「何かがあなたを学校に行かないようにしている」という文脈になるので受け手の痛みが少し減ります。その上で「話せるようになったら聞かせてね」とだけ伝え、待つ姿勢が大切です。
信頼関係がなければどんな作戦を立ててもうまくいきません。そして、この信頼関係を育てるには、数週間から数ヶ月かかることもありますが、それでいいのです。
信頼関係ができたら一緒に課題に向き合っていくのがおすすめです。「小さな一歩」を一緒にやってみるのも良いですね。
「今日は制服を着るだけ」「玄関にさわるだけ」「リビングに来てみる?」など、達成しやすいことから始めましょう。低学年の子には「今日はよく頑張った!!」という短くて優しい言葉が響きます。「できなかったこと」ではなく「できたこと」を見つけて伝えてください。
また、保護者の皆さん自身も、「甘やかしすぎではないか」と不安になるかもしれません。
お子さんの状態がレベル21ならばレベル22のミッションは「挑戦」ですし、レベル50のお子さんにレベル22のミッションをやらせるのは「甘やかし」です。大事なのはお子さんが今どこにいるかを見極めて、対処することです。赤ちゃん返りをしてしまっているならば、レベル1からでも甘やかしではないかもしれませんし、かなり元気なのに手取り足取りするのは甘やかしです。
不安は見えにくく、伝わりにくいものですが、保護者や先生の寄り添う姿勢は必ず伝わります。お子さんが「わかってくれる人がいる」と感じ、少しずつ安心して過ごせる時間が増えることを願っています。そのためには「見守る=何もしない」という関わりではなく、「注意深く観察する」「価値観を理解しようとする」けれども「直接的な声掛けやアクションは控えめにする」という関わり方が大事です。「何もしない見守り」は問題を長期化させるだけなのでお勧めできません。お子さんの1mmの頑張りに気づいて、メモして、しっかりと関わってください。

